舞鶴基地にて
昨年7月27日に行われた海上自衛隊舞鶴基地サマーフェスタ。陸上自衛隊の車両も展示されており、その中の一つに74式戦車も居ました。
74式戦車は1974年に制式採用された陸上自衛隊の国産第2世代主力戦車で、1961年に制式採用された61式戦車の後継として三菱重工業で開発されました。
当時の最新技術を盛り込んで開発されており、同世代の諸外国の戦車と比較しても遜色ない性能を有しています。現在は後継の90式戦車や10式戦車が開発された現在も数多く残っており、主力と言える存在です。
主砲には105mm砲を装備しており、射撃管制装置にレーザー測距儀や弾道計算コンピュータを搭載しています。油気圧サスペンションにより車体を前後左右に傾ける姿勢制御機能を備えています。
また1974年から1979年にかけて15年間に渡り873両が生産されたため、量産途中から改修が行われており、初期生産型~G型まで派生型が存在します。
最初の改修型であるB型はL28A1装弾筒付徹甲弾と75式粘着榴弾の2種類に加えてM735 装弾筒付翼安定徹甲弾が運用できるようFCSや弾薬架を変更したタイプ。
C型は塗装をOD一色から二色迷彩に変更したタイプで、以降全て二色迷彩となっています。D型は砲身にサーマルスリーブを装着したタイプで、C型以前の物は全てD型に改修されました。
E型は75式粘着榴弾に代わって91式成形炸薬弾を運用できるようFCSを改良したタイプで、D型以前の8割程度がE型に改修されました。
F型は92式地雷原処理ローラを装備出来るように改修した形式で、少数にとどまっています。G型は大規模な改修が行われ、パッシブ式暗視装置やレーザー検知装置、サイドスカートが追加装備され、1両の試作車と4両の量産車が存在します。
写真の74式戦車は滋賀県今津駐屯地に駐屯する第10戦車大隊第1中隊に配備されている物。
車体。車体には防弾鋼板の溶接構造となっており、避弾経始を考慮した設計となっています。車体前方装甲は厚さ約80mmの装甲板を斜めに配置しており、側面は約35mm、後面は約25mm、砲塔上面は約40mmとされています。
乗員は4名で、車長・操縦手・砲手・装填手で構成されます。配置は車体前方左側に操縦手、砲塔右側に砲手・車長、砲塔左側に装填手が乗車します。
車内は狭く、砲手席は車長席の足下にあるので、砲手が乗り込む際には一旦車長席に座ってから足下にある砲手席に滑り込む形で席に着きます。
操縦席にはT字のハンドルがあり、アクセル・クラッチ・ブレーキがそれぞれ備わっています。左に変速レバー・コントロールボックス、座席下に非常用脱出口があります。
車体は水密構造であるため潜水キットなどを取り付ける事で2m程度の潜水渡河が可能。また密閉構造を利用して車内を与圧する事でNBC汚染地域でも活動することが出来ます。
後方から撮影した74式戦車。74式戦車は陸上自衛隊の戦車として初めて上部転輪が無く、直径の大きな下部転輪を使用しています。
74式戦車の大きな特徴の一つに油気圧サスペンションによる姿勢制御機能を有することがあり、これは山地の多い日本における戦闘を考慮したため。
独立したサスペンションにより車高を上下に20cmずつ変化させること出来、前後左右別々に動作させることも出来るため車体全体を前後に6度ずつ、左右に9度ずつ傾ける事が出来ます。
姿勢制御は操縦席で行い、操縦席には車高制御スイッチの他にあらゆる姿勢から標準姿勢に戻る標準姿勢スイッチが装備されています。
これにより斜面で水平を保つことや両線から砲塔だけを覗かせて射撃する両線射撃も容易となっています。姿勢制御機能のお陰で待ち伏せなどより防御戦闘に有利となりました。
74式戦車の車体をベースにして開発された車両にも改良され受け継がれており、後に登場した90式戦車、10式戦車にも姿勢制御機能が備えられています。
このサスペンションはストロークが大きいため、悪路での走破性が同世代の戦車と比べて高くなっています。
真後ろから撮影。後部にはガントラベルロックや燃料携行缶のラックがありますね。
74式戦車のエンジンは三菱10ZF22WT空冷2ストロークV型10気筒ターボチャージ度・ディーゼルエンジンを採用しており、出力は720馬力、排気量は21500ccとなっています。
最高速度は53km/h、燃費は2.5L/kmです。燃料タンクは主タンクが780L、補助タンクが200Lの容量を持ち、主タンクのみの場合の航続距離は312km、補助タンクも使用すると392kmとなります。
主砲。主砲にはイギリスのロイヤル・オードナンス社製L7A1 105mmライフル砲が採用されており、日本製鋼所でライセンス生産されています。
主砲の俯仰角は-6度~+9度で、姿勢制御機能と組み合わせると-12度~+15度となります。-12度という最大俯角は当時の戦車としては最も大きな物でした。
砲身にはサーマルスリーブが取り付けられ、熱による砲身の歪みを防いでいます。砲塔の旋回及び俯仰角動作は電動式となっており、油圧式に比べて被弾時の安全性が向上しています。
主砲同軸機銃として74式車載7.62mm機銃が搭載されており、発射速度を毎分1000発と700発で切り替える事が可能となっています。また砲塔上部の車長席前方には12.7mm重機関銃M2用の銃架を装備しています。
アクティブ式赤外線暗視装置。正式名称は74式照準用暗視装置投光器部という物で、この投光器により赤外線を照射し、赤外線暗視装置で照らされた物を見ることが出来ます。
非常に強力なキセノンランプであり、赤外線フィルターを解除すれば通常の投光器としても使用されます。非常に強力であるため使用中に近くに立つと危険なようですね。
現在では赤外線暗視装置が普及し、アクティブ式赤外線暗視装置は相手も赤外線暗視装置を持っているとこちらの位置がばれてしまうので、現在では旧式の装備となっています。
強力な投光器を活かして1991年の雲仙普賢岳噴火の際には災害派遣が行われ、夜間の火砕流発生に対する警戒監視に使用されました。
操縦席用ハッチ。通常の移動時などは操縦手がハッチから顔を出して操縦していますが、戦闘時にはそんなことをするわけにもいかないので前方には操縦手用JM17潜望鏡が取り付けられています。
第10戦車大隊のマーク。司令部を名古屋に置く第10師団の隷下部隊なので、名古屋城の金のシャチホコがモチーフとなっています。
舞鶴基地内で展示される74式戦車。当日は砲塔の動作展示なども行ったようですね。
最後に説明書き。
・・・以上、三連休でした。ぽっぽやがお送りしました。