舞鶴港・若狭湾にて
7月26日の舞鶴地方隊展示訓練と27日の舞鶴基地サマーフェスタで撮影したDD-130 はつゆき型護衛艦9番艦「まつゆき」の写真を掲載します。
はつゆき型は7月25日に退役した元「いそゆき」を撮影しています。それ以前にも10番艦の「せとゆき」を撮影しているので、3隻目の撮影となりました。
はつゆき型護衛艦は海上自衛隊では初めての汎用護衛艦として建造された護衛艦で、その後の汎用護衛艦の礎を築いた護衛艦でもあります。
1977年度計画において海上自衛隊は草創期に導入された護衛艦を置き換える新型護衛艦の整備の必要に迫られ、そこで導入される事になったのがはつゆき型護衛艦です。
それまでの1個護衛隊群は対潜ヘリ3機を搭載するヘリ搭載護衛艦2隻、中距離SAMを搭載し艦隊防空を担うミサイル護衛艦1隻、127mm砲を搭載した対空護衛艦1隻、対潜護衛艦4隻の8隻ヘリ6機編成でした。
しかしソ連の長距離対艦ミサイルの脅威には対応できないと考えられ、艦隊再編が行われることとなりました。
内容としては、ヘリ搭載護衛艦1隻、ミサイル護衛艦2隻、個艦防空が可能な汎用護衛艦5隻の8隻とヘリ8機編成へと変更され、この体制は八八艦隊と呼ばれています。
護衛隊群を常時1グループ展開させるには4グループ必要で、汎用護衛艦も4グループ分の20隻が必要とされました。その為の第1弾として建造されたのがはつゆき型護衛艦です。
はつゆき型の最大の特徴として、海上自衛隊の艦艇では初めて機関にオールガスタービン方式を採用した事があります。
護衛艦へのガスタービンエンジンの採用は護衛艦「いしかり」で既に行われていましたが、「いしかり」ではディーゼルエンジンとの併用であり、オールガスタービンははつゆき型が初めてです。
機関には高速用にロールスロイス社製オリンパスTM3Bと巡航用にタインRM1Cが使用されており、両者の切り替えは回転数160rpm、速力24ノットで行われます。
はつゆき型は対潜・対空・対水上のどの任務にも対応可能な戦闘艦として計画され、その要求を実現するために海上自衛隊として初めてセンサー・武器類を戦術情報処理と連接し戦闘システムを構成したシステム艦です。
戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置には国産のOYQ-5が搭載されており、OYQ-5は小型のAN/UYK-20コンピュータを1基使用しています。
OYQ-5はレーダーなどのセンサー情報を元に目標の脅威評価を行い、対空ミサイルや速射砲による適切な武器の指向をリコメンドするシステム。
対空火器はシースパローIBPDMS、62口径76mm単装速射砲、高性能20mm機関砲が搭載されており、3重の対空攻撃手段が備えられています。
対空戦闘はまずOPS-14二次元対空レーダーで目標を探知、その諸元をOYQ-5に手動で入力、この情報と元にOYQ-5とオペレーターが情勢判断を行い攻撃の優先順位を決定、攻撃する目標の諸元をFCS-2射撃指揮装置に入力、シースパローまたは76mm砲による攻撃が行われます。
なお高性能20mm機関砲は自衛用の近接防空火器であり、基本的に艦のシステムから切り離され独立したシステムとして攻撃を行います。
対水上兵装としてはRGM-84ハープーン艦対艦ミサイルを装備しており、護衛艦隊配備の護衛艦としては初めて装備されました。これにより長距離の対水上打撃力が与えられています。
対水上戦闘はOPS-18対水上レーダーとNOLR-6電波探知装置で探知された情報を元に行われ、射撃指揮はSWG-1 HSCLCSにより行われます。
対潜兵装は従来より使用されてきた74式アスロック発射機と68式3連装短魚雷発射管HOS-301、搭載ヘリの短魚雷を使用する事が出来ます。
これにより遠距離にはヘリ搭載の短魚雷、中距離にはアスロック、短距離には短魚雷を使用する3重の対潜攻撃手段を備えることとなりました。
センサーとしては船体装備のOQS-4ソナー、OQR-1曳航ソナー、搭載ヘリのディッピングソナーとソノブイが使用され、その内OQS-4の情報のみOYQ-5に入力され処理されます。
それ以外のセンサーの情報は水測員により処理され、SFCS-6A水中攻撃指揮装置に入力されます。
電子戦手段といては電波探知装置にNOLR-6C、電波妨害装置にOLT-3が搭載されているほか、対ミサイル用のソフトキル手段としてOLR-6Cミサイル警報装置、Mk36 SRBOCデコイ展開システムが搭載されています。
なお、はつゆき型は重量軽減のため上部構造物にアルミ合金が使用されていましたが、フォークランド紛争の戦訓などからアルミ合金が火災に弱いことが露呈したため、8番艦「やまゆき」以降は鋼製の上部構造物となりました。
上部構造物が鋼製になった事によってトップヘビーとなる事を抑えるため、船体内にバラストが搭載された結果、8番艦以降は基準排水量が100トン増加しています。
はつゆき型護衛艦9番艦「まつゆき」は1983年4月7日に起工、1985年10月25日に進水、1986年3月19日に就役しており、建造は石川島播磨重工業東京第1工場で行われました。
就役後は第2護衛隊群第44護衛隊に配備されています。2003年に呉地方隊隷下の第22護衛隊に配置換えとなり、地方配備となりました。
2008年の自衛艦隊改編により地方隊隷下の護衛隊が護衛艦隊に編入され、それに伴って「まつゆき」も第14護衛隊には配備され定係港も舞鶴とされています。
はつゆき型護衛艦は老朽化のため退役が進んでおり、1番艦と3~7番艦までは退役、2・10・12番艦は練習艦に艦種変更されています。
一方で「まつゆき」を含む3隻が延命改修が行われることとなり、しばらくは現役にとどまると予想されています。
後方から撮影した「まつゆき」。はつゆき型護衛艦は後部が3段甲板となっているのが特徴で、一番上は飛行甲板、2段目にシースパロー発射機、一番下が舫甲板となっています。
正面から撮影した「まつゆき」。細い船体に上部構造物が載っているのが解りますね。
真後ろから撮影した「まつゆき」。
舷側通路。最近の護衛艦に比べると狭いような気もします。
艦首に装備された62口径76mm単装速射砲。イタリアのオート・メラーラ社が製造したコンパクト砲を日本製鋼所がライセンス生産したもので、毎分85発の発射速度を誇ります。即応弾は80発。
その後方に装備されている74式アスロック発射機。アメリカの開発したMk16 GMLSのライセンス生産品で8連装となっています。アスロックは短魚雷に飛翔用ロケットを取り付けた構造でm、より遠距離に魚雷を投射する事が可能な対潜兵装です。
アスロック弾庫の扉。アスロック弾庫は発射機の直ぐ後ろの上部構造物にあり、ここから直接装填を行うことが出来ます。なお弾庫の上部には艦橋がありますが、弾庫が爆発しても環境が破壊されないよう弾庫の両側に爆風の逃げ道となる小窓が6箇所設置されています。
高性能20mm機関砲。捜索・追尾用レーダーとM61バルカン20mm機関砲を組み合わせた近接防空火器で、はつゆき型護衛艦では3番艦から搭載され1・2番艦も後日装備されました。
ハープーン発射筒。RGM-84ハープーンが格納されており、そのままここから発射されます。煙突の両脇に斜め前方に向けて設置されており、発射炎が煙突に当たらないよう後部に排煙板が設置されています。
本来は4連装ですが、海上自衛隊の艦艇では3連装もしくは2連装にしているのをよく見かけますね。
68式3連装短魚雷発射管HOS-301D。ハープーン発射筒の真下に設置されており、使用する際はハンドルによって外側に向けられ圧縮空気により短魚雷を発射します。両舷に1基ずつ設置。
シースパロー発射機。5番艦「はまゆき」まではアメリカ製のMk29が使用されていましたが、6番館以降は国産のミサイル発射機3型が使用されています。
いずれも8連装のミサイル発射機で、この時は1箇所に模擬弾を装填して展示されていました。
「まつゆき」マスト。対水上レーダーにはOPS-18-1が、対空レーダーにはOPS-14Bが採用されています。その他ヘリ誘導用のタカンやセンサー類が見えますね。
艦首の錨。錨は両舷に装備されています。
搭載艇である改7.9m内火艇。2隻が搭載され、その内1隻は艦尾に繋留されていました。
救命浮環。
膨脹式救命筏。
艦首の日本国旗。
艦尾の自衛艦旗。
艦番号。
舞鶴地方隊展示訓練で撮影した「まつゆき」。自分が乗艦した「しらね」は常に「まつゆき」の後方を航行していたため、ほぼ後方からの写真しか撮影出来ませんでした。
舞鶴基地サマーフェスタで広報を行う「まつゆき」。
「まつゆき」の前方に停泊していた護衛艦「みょうこう」から撮影。
最後に説明書き。
・・・以上、朝に書こうと思ってたんだけどね。ef_end_63がお送りしました。