由良基地にて
海上自衛隊由良基地で10月22日に撮影したHSS-2B 8105号機。退役して由良基地に展示されている機体で、10月22日の掃海艇艦艇広報の際に撮影しました。
HSS-2はアメリカのシコルスキー・エアクラフト社が開発した対潜哨戒ヘリで、「シーキング」の相性で知られています。初飛行は1959年で1961年からアメリカ海軍で運用が開始されています。
それまでアメリカ海軍で運用されていた対潜哨戒ヘリであるHSS-1の後継であり、アメリカ海軍以外にも世界各国で幅広く採用されています。
海上自衛隊では1963年から導入が始まり、三菱重工によるライセンス生産が行われています。海上自衛隊が導入したのは原型のHSS-2と改良型のHSS-2A、HSS-2Bの3機種。
更に輸送・救難形としてS-61A、S-61A-1、S-61AHが導入されています。それらの機体は1991年まで185機が生産され、現在はすべて退役しています。
写真のHSS-2BはHSS-2に近代化改修を施した機体で、ディッピングソナー及び捜索用レーダーの国産化、磁気探知機・電子戦支援装置・ソノブイ・戦術情報処理表示装置の追加が行われています。
従来よりも搭載機器の重量が増えたため燃料搭載量と兵装搭載量が減少しており、航続距離はHSS-2Aの約985kmに対して約787kmと短縮し、兵装搭載ステーションも4カ所から2カ所に減少しています。
ディッピングソナーはHQS-102が搭載され、胴体下面中央部から吊り下げられて潜水艦の捜索を行います。捜索用レーダーはHPS-102で、胴体下面後方の引き込み式レドームに納められています。
新しく装備された磁気探知機・電子戦支援装置はそれぞれAN/ASQ-81とAN/ALR-66であり、磁気探知機は右脚スポンソンに、電子戦支援装置は機種とテールブームに搭載されています。
HSS-2は基本的に陸上運用のみでしたが、HSS-2AとHSS-2Bは艦載運用もあり、陸上型と艦載型があります。艦載型は着艦拘束装置に対応しており、電子戦支援装置とソノブイは艦載型のみの装備となっています。
HSS-2Bは1979年に初号機が納入され、1990年までに84機が調達されました。その内艦載型は48機で、陸上型は36機となっています。後継のSH-60Jにより2003年に全機が退役しました。
なおアメリカ海軍では1962年の命名規則改正でHSS-2からSH-3へと名称が変更されていますが、海上自衛隊ではHSS-2の名称のまま採用しています。
写真のHSS-2B 8105号機は1983年11月29日に海上自衛隊に納入され、1995年12月6日に退役しました。総飛行時間は約5500時間。最終配置は呉地方隊小松島航空隊。現在は由良基地に屋外保存されています。
今回説明書きを撮り忘れてしまったので、スペックを書いておきます。機体は全長22.3m、全幅4.98m、全高5.21mというサイズでローター直径は18.9m。乗員は4名。
エンジンは1500馬力のT58-IHI-10M2ターボシャフトエンジンを2基搭載し、最大速力は129kt、最大離陸重量は9299kgでした。
正面から撮影。
後方から。
機体左側面。
機体右側面。
エンジン周辺。エンジンは搭載機器の増加によりHSS-2Aの1250軸馬力から1500軸馬力に強化されています。
エンジン吸気口。吸気口の前方にはカバーが取り付けられていますね。
ローターヘッド。
テールローター。
テールブーム。艦載機であるため折りたためる様になっていますね。メインローターも同様に折りたたむことが可能です。
水平尾翼。HSS-2Aの23号機以降とHSS-2Bはテールローターと水平尾翼が大型化しています。
コクピット・窓が大きいため機内も比較的よく見えますね。
右脚スポンソン。後部にAN/ASQ-81磁気探知機を格納するスペースがあり、使用時はこのスポンソンから曳航されていました。
左脚スポンソン。こちらにはシーマーカーの投下装置が搭載されていた様です。HSS-2Bの兵装搭載ステーションは左右のスポンソンの内側にありますね。
HSS-2の尾輪は遊動式であったため着艦する護衛艦の飛行甲板にはリテーニングレールが備えられていました。
胴体下面。HSS-2は胴体下面が艇体構造となっており、着水することが可能です。
胴体左側面のハッチ。何故か半ドア状態となっていました。
胴体右側面のスライドドア。
スライドドア上部に装備されている救助用ホイスト。
胴体右側面のバブルウインドウ。
胴体下面の捜索用レーダーのレドームとソノブイランチャー。ソノブイランチャーは6連装のものが2基装備されています。
AN/ALR-66電子戦支援装置のアンテナ。写真はテールブームの下にある方で、前方には機種の左右に同じアンテナが取り付けられています。
燃料給油口。最大燃料搭載量は700galで使用燃料はJP-5。
右脚スポンソンの緊急用膨脹式フロート。緊急着水時はこのフロートを使用する事で浮航時間を延長することが出来ます。
機体側面とテールブームの機番・所属及び海上自衛隊表記。機番の上にある「コ」の表記は小松島航空隊を意味する所属表記で、2008年の航空部隊大改編前に見られた表記です。
・・・以上、海際なので保存状態は余り良くない。鉄道員日記がお送りしました。