舞鶴基地にて
昨年7月27日に行われた海上自衛隊舞鶴基地サマーフェスタ。海上自衛隊のイベントですが、陸上自衛隊も協力して車両の展示を行っていました。
NBC偵察車、除染車3形B、74式戦車とこの96式装輪装甲車が展示されており、舞鶴基地サマーフェスタでの陸自ネタは今回が最後となります。
96式装輪装甲車は1996年に制式採用された陸上自衛隊の装甲兵員輸送車で、陸上自衛隊では初めてとなる装輪式の装甲兵員輸送車です。
82式指揮通信車や87式偵察警戒車で装輪式装甲車の運用実績を積んだ陸上自衛隊が、既に旧式化していた60式装甲車の置き換えと73式装甲車の補完のため装輪式装甲兵員輸送車の開発を行うこととなり、小松製作所に対して試作を発注しました。
試作は1992年から始まり、様々な試験を経て1996年に制式採用、その後は装備実験隊と普通科教導連隊での部隊実験が行われ、1998年に第3普通科連隊に部隊配備が行われました。
装輪式であるため整地での高速性と運用性が高く、最高速度は100km/hとなっています。8輪のコンバットタイヤを装備し、空気圧調整装置により状況に応じてタイヤの空気圧を調節することが可能です。
通常は後2軸が駆動しますが、全軸駆動に切り替える事も可能。ステアリングは前2軸で行います。エンジンはトランスミッションと一体化されたパワーパックとなっており、車体前方左側に搭載されています。
エンジンは三菱6D40 液冷4ストローク直列6気筒ターボチャージ度・ディーゼルエンジンが採用され、トランスミッションは5速AT。エンジンルームには消火装置が装備され、車内外から操作できます。
乗員は操縦手と車長の2名で、その他小銃小隊8名を乗車させることが出来ます。車体前方右側に操縦手席があり、その後方に車長席、その隣に小銃班長席、後部に後部乗員席があります。
後方から撮影した96式装輪装甲車。後部乗員席があるため車体後部に大型のランプドアが設置され、油圧により開閉されます。このランプドアも車内外から操作でき、エンジン停止時用に手動ドアも取り付けられていますね。
後部乗員席の上面には4枚の外開きハッチがあり、隊員が身を乗り出して射撃が可能です。このためガンポートは装備されていません。後部側面には防弾ガラスの窓が片側2箇所あります。
その他操縦手席、車長席、小銃班長席にもそれぞれハッチがあります。NBC防護のため空気清浄機も搭載されており、作動時は空気配管とガスマスクを接続する事によって各隊員に清浄な空気を供給できます。
73式装甲車には車体底面に緊急脱出用ハッチがありましたが、96式装輪装甲車には設置されておらず、また浮航能力も備えていません。
車長用キューポラと12.7mm重機関銃M2用銃架。96式装輪装甲車にはA型とB型があり、A型は96式40mm自動てき弾銃を、B型は12.7mm銃機関銃M2が搭載されます。
写真の96式装輪装甲車はB型という事になりますね。A型とB型では銃架の構造は別々の設計となっており、交換はキューポラごと行わなくてはならないため事実上交換は想定されていません。
どちらも乗員による直接操作の他に車内からの遠隔操作が可能となっています。普通科部隊にはA型が、その他の部隊にはB型が主に配備されているようですね。
車体後部の両側には76mm発煙弾発射機を搭載しており、必要に応じて後部上面に70式地雷原爆破装置を搭載する事も可能です。
自衛隊イラク派遣の際にはB型が持ち込まれ、ワイヤーカッターや車長席周辺への装甲板追加などの改修 が行われました。
この改修に更に増加装甲を追加した国際貢献仕様があり、96式装輪装甲車(?鵺型)として調達が行われています。
操縦手席用風防。公道走行時用に操縦手席と小銃班長席に風防を取り付ける事が可能で、この風防はあくまで平時の公道走行時用のため防弾性などは考慮されていません。
風防はハッチを開けた上で固定し、ボルト止めで設置するため風防使用中はハッチの開閉が不可能となります。どちらの風防にもワイパーが装備されていますね。
第10戦車大隊のマーク。写真の96式装輪装甲車は滋賀県今津駐屯地の第10戦車大隊本部管理中隊に配備されている物で、74式戦車と共に舞鶴基地にやってきていました。
最後に説明書き。
・・・以上、次も割と時間の掛かるネタ。鉄道員日記がお送りしました。