和歌山港にて
本日撮れたてのネタです。和歌山港に入港した海上自衛隊のおおすみ型輸送艦1番艦 LST-4001「おおすみ」。海上自衛隊ネタ自体が久しぶりですが、和歌山港でというのはなおさら久々ですね。
おおすみ型輸送艦は海上自衛隊が3隻を保有している輸送艦で、みうら型輸送艦の後継として1998年に1番艦が就役しました。現在海上自衛隊が保有する唯一の輸送艦でもあります。
従来の海上自衛隊の輸送艦は艦首を浜辺に乗り上げて揚陸を行うビーチング方式を採用していましたが、このおおすみ型では艦内に搭載したLCACによって揚陸が行われます。
ビーチングのためには艦首底面を平たくする必要があり、揚陸用のランプと開閉機構も必要となります。しかしこれらの要因は外洋航行能力を低くするという欠点がありました。
そこでおおすみ型は艦が直接揚陸を行わない方式として速力と安定性を改善した船型とされています。なお全通甲板に近く大型ヘリを2機運用することが出来ますが、大規模な航空機運用能力は無いため強襲揚陸艦には分類されません。英名表記及び艦種記号ではLST(戦車揚陸艦)とされていますね。
船体は後部にLCAC用のウェルドックが設けられ、上甲板は前方が車両甲板、後方が飛行甲板となっています。船体内には第4甲板の高さに車両甲板がありますね。
この車両甲板は大部分で2甲板分の高さを確保しており、後方でLCAC用のウェルドックに接続しています。上甲板とは前後2基のエレベータで連絡していますね。
第4甲板の車両甲板は長さ100m、幅13mとなっており、舷側に設けられた幅5mのサイドランプから車両を乗り入れることが出来ます。戦車など重量のある車両はエレベータが対応できないため、第4甲板にのみ搭載されますね。
第4甲板の車両甲板を挟むようにして両舷側に第2・3甲板があり、乗員用の居住区と陸上自衛隊の隊員を輸送するための居住区があります。この居住区は3段ベッドとなっているようですね。
これらの車両甲板・隊員用居住区によりおおすみ型1隻につき、武装した陸自隊員330名及び3 1/2tトラック65台、または戦車18両を輸送する事が出来ます。また災害派遣などで被災者を収容する場合、居住区以外にも車両甲板などのスペースを使用して最大で1000名を収容できるとされています。
揚陸に使用するLCACはいわゆるホバークラフトで、おおすみ型1隻に対して2隻が搭載されています。航空機は必要に応じて陸自のヘリを搭載する物とされていますね。
船体の後部は上面が飛行甲板で内部がLCAC用のウェルドック。航空機用のスポットは2つあり、前方が駐機用、後方が発着艦用となっています。このスポットはCH-47クラスのヘリにも対応できます。
このおおすみ型輸送艦は基準排水量8900t、満載排水量14000tで全長は178m、全幅は25m、深さは17m、喫水は6mとなっており、乗員は135名。
機関は13200馬力のディーゼルエンジンが2基搭載され、最大速力は22ノット。みうら型輸送艦やその前級のあつみ型輸送艦が14ノットだったのに比べるとかなり高速化されていますね。
写真のLST-4001「おおすみ」は1995年12月6日に起工し、1996年11月18日に進水、1998年3月11日に就役しました。建造は三井造船玉野事業所で行われています。
当初は艦の動揺を減少させるフィンスタビライザーが装備されず、2番艦から装備されました。後に航空機用燃料タンクの大型化と同時に設置されています。
なおおおすみ型はMV-22オスプレイやAAV-7水陸両用車に対応するための改修が進められており、既に「おおすみ」に対してある程度の改修が行われているようです。
本日は内閣府の主催で平成29年度大規模地震時医療活動訓練が行われており、陸海空自衛隊も参加していました。海上自衛隊からは「おおすみ」の他にC-130Rが1機と人員160名が参加したようですね。
今回の訓練ではDMATの参集と広域医療搬送の実施が行われており、臨時の医療拠点として「おおすみ」が使用されました。和歌山港に接岸しての訓練だったようですが、航空機が発着したかは不明。
自分は情報を得るのが遅かったため入港シーンは撮影できませんでしたが、なんとか停泊中の姿を撮影できました。7月15日の艦艇後方には行けなかったので、久々に和歌山港で海上自衛隊艦艇を見られてとても嬉しかったです。
後方から撮影。艦尾は上記の通りLCACのウェルドックであり、大きな下ヒンジ式の扉がありますね。非常に広い甲板を持っているのが解ります。
艦尾部の拡大。停泊時に扉を開けておくことは割とあるようですね。
ウェルドックに搭載されたLCAC。アメリカ海軍が開発したLCAC-1級エア・クッション揚陸艇を輸入した1号型エアクッション艇です。
このLCACは4基のガスタービンエンジンを使用して最高70ノット以上で航行できる揚陸艇です。最大速力を発揮できるのは空荷の状態ですが、最大積載時でも40ノット以上で航行できるようですね。
最大積載量は約70tで、主力戦車1両を輸送可能。その他の装甲車やトラックであれば2~5台程度を1度に輸送することができます。人員輸送用モジュールを搭載した場合、180名を輸送可能。
艦首からマストにかけて。写真ではほぼ見えませんが、上部構造物の前方船体部に車両甲板に通じるサイドランプがあります。おおすみ型は右舷側で接岸するので、写真の左舷側サイドランプは殆ど使用されませんね。
船体・上部構造物とも傾斜がつけられたステルス性を考慮した設計であり、マストもラティスマストではなく塔型マストですね。
左右から見た上部構造物。後部の1段下がった所にも艦橋のような窓が並んでいますが、そちらは航空機管制室です。制式には第一揚塔管制室と言うようですね。
おおすみ型では医療機能の強化も図られており、上部構造物の第1甲板レベルに手術室、集中治療室2床、病床6床と歯科診療室が設けられました。甲板上に陸自の野外手術システムを展開する事で更に医療機能を強化することが出来ます。
艦首の拡大。錨甲板の部分のみ少し低くなっており、厳密には全通甲板ではありません。写真では小さくて解りづらいですが、揚錨揚索機は護衛艦に多い縦置き型ではなく民間に多い横置き型ですね。
船体側面に搭載された11m作業艇。反対側にも搭載されています。
唯一の武装である高性能20mm機関砲。言わずと知れた自衛用火器で、上部構造物の前後に搭載されています。護衛艦以外で高性能20mm機関砲を搭載している艦というのはあまり多くありませんね。
岸壁側から撮影した「おおすみ」。色々邪魔で見えづらいですが、右舷側のサイドランプドアが開いています。
岸壁に並んだDMATの車両。各地から集まってきていたようで、手前の車両は山口DMATの表記があります。その他にも各地のDMATの車両を見かけました。
最後に艦尾の自衛艦旗と艦名表記。通常艦名表記は艦尾の後面に書かれますが、おおすみ型では扉が設置されているため側面に表記されています。
・・・以上、「おおすみ」は2015年の横浜港以来。ef_end_63がお送りしました。