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Channel: 鉄道員日記(ぽっぽやにっき)
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陸上自衛隊 10式戦車@アジア太平洋トレードセンター

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アジア太平洋トレードセンターにて

3月15日に大阪南港にあるアジア太平洋トレードセンターで行われたOSAKA防衛・防災フェスタ。自分も参加して自衛隊の装備品を中心に撮影してきました。

今回の一番の目玉がこの10式戦車。関西では初となる展示のようで、自分も10式が来るとあっては参加せずには居られませんでしたね。

10式戦車は2010年に制式採用された陸上自衛隊の最新主力戦車で、陸上自衛隊の国産戦車としては61式、74式、90式に次いで4代目となります。

従来の戦車よりも戦闘力の総合化、火力・機動力・防護力の向上、小型・軽量化などを目標として開発されており、先代の90式戦車と同等かそれ以上の能力を持ちつつ小型・軽量化されています。

先代の90式戦車は殆どが北海道に配備されており、本州以南の主力戦車は一世代前の74式戦車であるためこれに変わる40tクラスの戦車が必要とされました。

開発は防衛省技術研究本部が行い、1996年から将来火砲・弾薬や将来車両装置の試作研究という形でスタートし、2002年から2008年にかけて試作が行われました。

2010年からは三菱重工業によって量産型の製造が開始されており、初年度は13量が調達されました。以降同様のペースで調達が進んでいます。

10式戦車の開発コンセプトは全国的な配備に適した小型軽量化、高度なC4I能力の付加、火力・機動力・防護力の向上、民生品の採用などによるコストの抑制、将来の能力向上に対応するための拡張性の確保というもの。

10式戦車の全備重量は43.3tと同世代の戦車と比べて10t以上軽く、更に取り外しの容易な外装式モジュール装甲を採用しているため、輸送時などは更に軽量化することが出来ます。

90式戦車は輸送の際は砲塔と車体を分離するか数の少ない特大型運搬車を使用する必要がありましたが、10式戦車はモジュール装甲を取り外すだけで重量40t程度となります。

そのため74式戦車の輸送に使用する73式特大型トラックに搭載可能なほか、有事の際に数をそろえやすい民間の大型トレーラーでも輸送が可能となり、戦略機動性が大幅に向上しています。

動力装置には水冷4サイクルV型8気筒ディーゼルエンジンと油圧機械式無段階自動変速操向機を組み合わせたパワーパックを搭載しています。

エンジンは4サイクル水冷ディーゼルエンジンを採用し、このエンジンは電子制御式ユニットインジェクタや可変ノズル排気ターボ過給機、セラミックスコーティングなどの最新技術が導入され、小型軽量ながら大出力を実現しています。

最大出力は1200ps/2300rpmで、出力重量比は27.7ps/t。この出力重量比はフランスのルクレールやドイツのレオパルト2A4と同等の値です。

変速操向機には変速比を最適に制御できる油圧機械式無段階自動変速操向機が採用されており、これによって高い伝導効率を得ているため90式と同等のスプロケット軸出力となっています。

車体重量は軽量化され、軸出力は90式と同等と言うことで実質の出力重量比は90式よりも高い物となり、より高い機動性を実現することが出来ました。最高速度は70km/hで、後退時にも同じ速度を出すことができます。

懸架装置は74式戦車と同じく全転輪が油気圧式となり、90式では省略されていた左右への車体傾斜機能が復活しています。この懸架装置には車体の振動の制御のためセミアクティブサスペンションが採用されています。

セミアクティブサスペンションは車体に取り付けられたセンサーが振動や傾きを探知し、そのデータを基に油気圧懸架装置の減衰係数を能動的に変化させることで振動を抑えています。

特に不整地での機動性を向上させる効果があり、整地での最高速度は90式と同じですが、不整地での最高速度は90式よりも向上している物と思われます。

またこのセミアクティブサスペンションは砲撃時の反動も軽減させており、軽量な車体での射撃精度の確保に寄与しています。

10式戦車の主砲は国産44口径120mm滑腔砲が採用されています。開発は日本製鋼所。この滑腔砲は90式の装備していたドイツのラインメタル社が開発した44口径120mm滑腔砲よりも13%軽い物となっています。

副武装としては主砲同軸機銃として74式車載7.62mm機関銃、砲塔正面に12.7mm重機関銃M2を装備しています。これは従来の戦車と変わりませんね。

直接防御力に関しては新たに開発した複合装甲を採用し防護力を下げずに軽量化を行っています。技術の進歩により90式よりも防御力は向上しているとされ、現存のあらゆる戦車砲弾に抗堪できるとされています。

外装式モジュール装甲の採用によって任務の性質や重量制限などに応じて装甲の程度を変更する事が可能で、装甲を取り外せば40t、通常時は44t、最大時は48tとなるようですね。

間接防御力として砲塔の両側面前方に発煙弾発射機が装備されています。砲塔の四隅に配置されたレーダー検知装置と連動して発煙弾を発射します。

10式戦車では同世代戦車の基本装備といえるC4Iによる車両間データリンクシステムを陸自車両として初めて搭載しており、これは自車や味方の位置をネットワークにより情報共有する事で車内モニターのデジタルマップにリアルタイムに敵味方情報が表示されるといもの。

また基幹連隊指揮統制システムと連接する事で司令部や他の部隊との連携を深めることができます。小隊的にはOH-1観測ヘリやAH-64D戦闘ヘリなどともデータリンクできるようになるそうです。

量産車の調達は2010年度から開始し、2015年度までに76両が調達されています。現在の所10式が実戦配備されている部隊は第1師団第1戦車大隊、第2師団第2戦車連隊、第8師団第8戦車大隊の3大隊。

教育部隊には富士学校の機甲科部と富士教導団戦車教導隊、東部方面混成団第1機甲教育隊に配備されています。写真の10式戦車は静岡県駒門駐屯地の第1機甲教育隊第2中隊に配備されている物。

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正面から撮影した10式戦車。

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左側面。

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右側面。

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左後方、後面、右後方から。後面中央の大きな排気口がラジエーターの物、その横がエンジン用の排気口です。

10式では90式にはなかった補助動力装置が搭載されており、増大した電子機器の電力を担っています。待機時などの電力を補助動力装置が担うことで燃費も改善しています。補助動力装置の排気口は後面右端。

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別角度から後端部のみ撮影。

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主砲。上記の通り主砲には国産の44口径120mm滑腔砲が採用されています。また将来的に寄り攻撃力の高い55口径の物に換装することが可能なように設計されています。

同時に10式専用弾として10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾が開発されており、ドイツ製のDM53と同様に装薬の強化により初速を上昇させています。

DM53は44口径砲で射撃した場合、距離2kmで600mm程度の装甲貫徹力を有しており、10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾も同等の装甲貫徹力がある物と思われます。

また砲身はNATO規格であるため従来90式が使用してきた砲弾やその他のNATO規格120mm砲弾が発射可能です。

90式と同様に自動装填装置も装備しており、従来は装填時の角度が決まっていたため装填の度に主砲の角度を戻す必要がありましたが、10式の自動装填装置はある程度の府仰角がかかっていても装填可能。

砲口の左側には砲口照合用ミラーが設置されており、砲塔防楯の左側に砲口照合装置の送受信部から照射されたレーザーをミラーが反射し、砲身の歪みが測定されます。試作車と量産車ではミラーの位置が異なります。

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砲手用サイト。砲手用サイトは可視光と赤外線カメラが搭載されており、従来は接眼式だけだった照準器もタッチパネル式大型ディスプレイとなりました。

射撃管制装置には走行中も主砲の照準を目標に指向し続ける自動追尾機能があり、タッチ操作で発砲が可能です。その他各車に索敵エリアを指示したり最適な目標を自動的に割り振り同士討ちや重複射撃を避けることも可能となっています。

また自動索敵機能もあり、センサーが目標を探知すると目標の種類を自動的に識別し、脅威度の判定を行います。これらの情報はディスプレイに色分けされて表示され、データリンクで接続された各車とも共有されます。

照準の際はデータベースから目標の弱点部位を自動的に照準し、射撃後に射撃管制装置が着弾場所を精密に計測した結果、撃破が不確実と判断した場合は乗員に次弾発射をリコメンドします。

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車長用サイト。車長用サイトは360度の全周旋回が可能な物となり、赤外線カメラが搭載されています。索敵だけでなく照準を行うことも出来、砲手の目標をオーバーライドする可能です。

小隊長車が他の小隊車の射撃管制装置をオーバライドし、照準させることもできます。

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砲塔の4カ所に取り付けられたレーザー検知装置。90式にも同様の装備はありましたが、90式は前方180度しか検知することができませんでした。10式は全周囲からのレーザー照射を検知することが可能。

搭載されているのはアメリカのグッドリッチ社製Model301MGレーザー警戒システム。このシステムはレーザー測距装置、ミサイル誘導用レーザーなどの照射方向を±1度という精度で検知し、車内モニターや警告音で乗員に警告します。

写真は全てカバーが掛かった状態ですが、センサー部にはは3つの窓があり各種レーザーの種別と波長に対応しています。

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環境センサー。フランスのタレス社製のMetsmanというモデルで、風速・風向・気圧・気温を測定し弾道コンピュータに送ることで射撃精度を向上させています。このセンサーは起倒式となっています。

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砲塔先端部。砲塔正面には楔形の装甲モジュールが配置されており、外見上の大きな特徴ですね。主砲付け根の左側には砲口照合装置、右上に砲手用直接照準眼鏡、右下に同軸機銃の発射口があります。

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砲塔側面のモジュール装甲。このモジュール装甲は雑具収納箱を兼ねた中空装甲となっており、中空装甲は主に成形炸薬弾に効果があります。

1枚目の装甲が弾頭を起爆させ、2枚目までの空間が成形炸薬弾のメタルジェットを減衰させます。

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モジュール装甲の拡大。上下にレバーがあり、その反対側に蝶番があるのが解りますね。試作車にはこの扉がありません。

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砲塔前面から後方にかけての傾斜具合。90式は角張った箱形の砲塔でしたが、10式は複雑な形状をしていますね。

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砲塔後部の雑具収納バスケット。このバスケットは90式よりも2回りほど大きくなっており、対戦車ロケット対策のスラット装甲としての機能もあるようです。こちらも試作車と形状が異なります。

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履帯とサイドスカート。この日はアスファルト上を装甲するためゴムパッドが装着されていました。サイドスカートの下にはゴム製のスカートが装備され、赤外線の放出を抑えています。

サイドスカートとゴムスカートの前後には乗員用ステップがありますが、このステップも試作車とは数が異なります。

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起動輪。起動輪は後部にあります。90式戦車では転輪数が6輪でしたが、10式は5輪。

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操縦手用ハッチ。このハッチはスライド式です。操縦手はハッチの潜望鏡のみならず、車体の前後に取り付けられたカメラをモニターで見ながら操縦できるようになり、操縦性が向上しました。

また写真には写っていませんがハッチの横には赤外線暗視装置があり、夜間の操縦の際に暗視ゴーグルを使用する必要がなくなりました。

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車長用ハッチ。全周に向けて潜望鏡がありますね。

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12.7mm重機関銃M2用の銃架。この銃架は車長用ハッチの外側にある円形のレールに取り付けられており、旋回式となっています。

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車体前方のカメラ窓。写真は蓋がされている状態。

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後方のカメラ装置。こちらも蓋がされています。

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砲塔の側面前方に取り付けられた発煙弾発射機。モジュール装甲の中に埋め込まれるように設置されており、殆ど見えませんね。

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後部左側の指示器と尾灯、BOテールランプ。一体化されているのが新鮮ですね。

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第1機甲教育隊のマーク。

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銘板。

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最後に説明書き。


・・・以上、迫ってくるねぇ。ef_end_63がお送りしました。

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