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Channel: 鉄道員日記(ぽっぽやにっき)
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海上自衛隊 DDH-183 いずも型護衛艦一番艦「いずも」和歌山港

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和歌山港にて

さて、7月15日に和歌山港で艦艇後方を行った海上自衛隊のいずも型護衛艦1番艦 DDH-183「いずも」。自分は14日の入港から17日の出港まで色々と見てきました。

出入港の様子などは次回に掲載するとして、今回は「いずも」の細部について掲載したいと思います。大量の画像で長い記事となっておりますので、お時間のある時にご覧ください。

いずも型護衛艦は海上自衛隊が現在運用しているヘリコプター搭載護衛艦(DDH)で、海上自衛隊最大の護衛艦です。現在2隻が建造されており、2015年から運用が開始されました。

前級のひゅうが型護衛艦を拡大した設計となっており、ひゅうが型と比べて基準排水量は約6000t増加しており、全長は51m長くなりました。約6000tというとはたかぜ型護衛艦1隻分に相当しますね。

ひゅうが型と同様に上部構造物を右舷側に寄せたアイランド方式を採用し、第1甲板を全通甲板としています。その第1甲板が飛行甲板となっており、ヘリコプター5機の同時発着が可能となっています。

ひゅうが型と比べると武装類は少ないため個艦戦闘能力は低く、代わりにヘリの運用に重点が置かれ、また輸送艦・補給艦・病院船を兼ねる多目的に使用できる洋上プラットフォームとしての機能が強化されていますね。

船体は第1甲板から第8甲板まで設けられており、第1甲板は飛行甲板、第2甲板は司令部区画や居住区画、医療区画などがあります。第3甲板から第5甲板は航空機格納庫とされ、ひゅうが型より1層増した3層分の高さが確保されていますね。第6甲板より下には居住区画や食堂、発電機室などが設けられているようです。

主機関はガスタービンエンジン4基で、高速用と巡航用を組み合わせたCOGAG方式が採られています。ゼネラル・エレクトリック製のLM2500IECが採用されており、1基あたりの出力は28000PS。

LM2500は従来の護衛艦にも採用されてきたガスタービンエンジンですが、いずも型では電子式の燃料制御システムを搭載するLM2500IECとなり、従来よりも出力が3000PS向上しました。

主発電機もガスタービンエンジンで、同じくゼネラル・エレクトリック製のLM500-G07が採用されています。1基あたりの出力は3400kWで、4基搭載されていますね。

いずも型は艦隊の中核となる位置づけの護衛艦であり、戦術情報処理装置は武器管制機能のないOYQ-12を搭載しています。更に海上作戦部隊指揮管制支援システムと接続する端末として、OYQ-51洋上ターミナルを搭載していますね。

第2甲板に設けられている戦闘指揮所と旗艦用司令部作戦室はひゅうが型よりも拡大されており、その他にも100名規模の統合任務部隊司令部などを設置できる多目的室があります。

右舷中央部にはサイドランプが設けられ、第5甲板の航空機格納庫に通じています。このサイドランプを通じて車両を収容することも可能で、陸上自衛隊の3 1/2tトラックを約50両積載可能とされています。航空自衛隊のペトリオットミサイルシステムも搭載可能ですが、戦車は重量の関係から積めません。

更に居住区画は乗員数よりも多く確保されており、陸上自衛隊の隊員約400名を収容することが可能。陸自隊員の収容能力は、おおすみ型輸送艦の約330名を上回っていますね。

また35床の入院設備があり、手術室や集中治療室も備えられています。歯科治療から外科手術まで可能となっており、先述の多目的室は臨時の戦闘治療所としても使用可能です。陸上自衛隊の野外手術システムを搭載して医療機能を強化することも可能で、災害派遣時などは48時間以内に医療チームを積み込んで活動するようですね。

このような輸送艦・病院船機能の他に補給艦機能もあり、臨時燃料移送装置を用いて他の艦艇に洋上補給を行うことが可能です。補給が出来るのは真水と燃料で、本格的な補給艦のようにドライカーゴや航空燃料を補給することは出来ません。まあドライカーゴはヘリで吊り下げて移送できそうですが。

武装は自衛用の物のみで、Mk15 mod31 SeaRAMと高性能20mm機関砲を搭載しています。どちらも近接防御火器であり、SeaRAMは海上自衛隊で初採用となりました。ひゅうが型では発展型シースパローを搭載していたため防空能力は劣っていますが、SeaRAMにより近接防御能力はいずも型の方が優れています。

対潜戦能力も必要最低限に抑えられ、ソナーはひゅうが型のOQQ-21から側面アレイを省いたOQQ-23が搭載されました。短魚雷発射管やアスロックは無く、デコイなどのソフトキル手段しか持ち得ていません。

このことからいずも型の作戦行動は単艦で行動するものではなく、あたご型護衛艦やあきづき型護衛艦など艦隊・僚艦防御の可能な護衛艦と共に行動することを前提としています。

写真のいずも型護衛艦1番艦 DDH-183「いずも」は平成22年度予算で建造され、2012年1月27日に起工、2013年8月6日に進水、2014年9月22日に竣工、2015年3月25日に就役しました。

就役後は第1護衛隊群第1護衛隊に配備され、横須賀を定係港としています。それまで同隊に配備されていたひゅうが型護衛艦1番艦「ひゅうが」は舞鶴の第3護衛隊群に配置換えとなり、第3護衛隊群に配備されていたしらね型護衛艦1番艦「しらね」が除籍されました。

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正面から撮影した「いずも」。上部構造物が右舷側に寄せられ、左舷側に広いスペースが設けられているのが解りますね。

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後方から。

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真後ろから。こうして見ると第1甲板は幅が広いですが、喫水線上ではかなり絞り込まれていることがわかりますね。

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右側面。艦橋が右舷側に寄っていることから接岸時は右舷を着けるのが殆どですね。

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艦尾。艦尾には両舷側にスポンソンが設けられ、右舷側に高性能20mm機関砲が、左舷側にSeaRamが装備されています。ひゅうが型では左舷側に高性能20mm機関砲が装備されているのみでした。

両舷のスポンソンを結ぶ通路の中央には12.7mm重機関銃M2用の水上艦用機関銃架がありますね。

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左舷側から見た艦首。主錨は正面と左舷側に設けられており、正面の主錨を使用する機会が多いようです。

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上部構造物。ステルス性を確保するため角張った形となっており、写真では1つの大きな構造物に見えますが、実は第2煙突の前で前後に分かれています。

よく見ると煙突も角張った形となっており、円形だったひゅうが型に比べて更にステルス性が追求されていますね。

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後方から見た上部構造物。艦橋のような物が後部にも設けられており、そちらは航空管制室となっています。前方の上部構造物と後方の上部構造物の境目には臨時燃料移送装置がありますね。

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航空管制室の拡大。飛行甲板に面する左舷側に張り出しが設けられています。これはひゅうが型には無かった物で、飛行甲板全体を見渡すことが可能となっていますね。

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張り出しの部分。他の部分に比べて窓が上下に長いことが解ります。

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甲板上から見た上部構造物。人と比べるとそのサイズの大きさが解ります。近くで見ると巨大なグレーの壁にしか見えません。

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広大な飛行甲板。長さは245m、幅は38mです。ひゅうが型と比べると約1.5倍に拡大されていますね。

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航空機用スポットのライン。いずも型では発着用のスポットが左舷側に5つ、駐機用のスポットが右舷側に1つ設けられています。

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第2航空機用昇降機。いずも型の大きな特徴で、デッキサイド式エレベーターとなっています。大型の機体でもテールを舷側にはみ出して駐機すれば昇降が可能で、エレベーターのサイズを超える機体も扱えるようになりました。

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第2航空機用昇降機の底板。

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第2航空機用昇降機の開口部。格納庫にアクセスしています。

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艦内から見た開口部。

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格納庫扉。こちらも人と比べるとかなり大きなサイズであることが解ります。

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格納庫扉を閉めた状態。格納庫扉の外面はステルス性向上のため波板となっており、縞模様に見えます。

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第1甲板から見た第2航空機用昇降機。こうして見ると甲板の一部にしか見えませんが。

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第1航空機用昇降機。こちらは従来通り船体中央部に設けられています。SH-60クラスの機体であればローターを折りたたまずに載せることが可能。底部にワイヤーが固定され、それを巻き取ることでエレベーターが昇降する構造となっていることが解ります。

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航空機用昇降機のロック機構。かなり太いピンでロックされるようになっており、挿入される際には大きな音が鳴ります。こちらは第1航空機用昇降機のもの。

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ロックピンが挿入された状態。こちらは第2航空機用昇降機のもの。

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航空機用昇降機の操作盤。飛行甲板側と格納庫側の両方に設置されています。

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航空機用昇降機周辺のスタンション。転落防止のための物で、こちらも操作盤からの操作によって自動で昇降します。

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航空機用格納庫。前述の通り3層分の高さがあり、シャッターを閉じて第1・第2格納庫と航空整備庫に分けることが出来ます。艦首側から第1格納庫、第2格納庫、航空整備庫となります。

これら3つを合わせて長さ125m、幅21mのスペースが確保されていますね。最大積載機数は14機とされ、ローターを広げた状態での整備やローターを畳めない機種の収容も可能です。

航空整備庫には天井クレーンも設けられており、エンジン交換などの本格的な整備も可能となっているようです。

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防火シャッター。この時は第1・第2格納庫が開放され、航空整備庫は閉じられていました。

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格納庫管制室。第1・第2格納庫に1ヶ所ずつ設けられています。

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サイドランプ。幅4m、耐荷重30tのランプで、右舷側に設置されています。第1格納庫に通じており、車両の収容にも使うことが出来ます。上面は車両通行時の滑り止めとなるよう突起がありますね。

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サイドランプを収容した状態。

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飛行甲板に戻ってこちらは第1弾薬・貨物用昇降機。底板がハッチを兼ねるのではなく、横に開く方式となっています。弾薬・貨物用昇降機は3基ありますが、第1が少し小さいサイズとなっているようですね。

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第2弾薬・貨物用昇降機。第1航空機用昇降機の前方にあり、直下が多目的室であるためヘリで運ばれてきた患者をストレッチャーごと速やかに収容する、という使い方も出来ます。

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第3弾薬・貨物用昇降機。艦尾に一番近いスポットの隣に設置されています。

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第2弾薬・貨物用昇降機の呼出器。スイッチは第2甲板から第8甲板まで選択できるようになっています。

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境界灯。飛行甲板の外周を示す灯器で、汎用護衛艦では黄色でしたが、ひゅうが型といずも型では青色となっています。

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甲板状況灯。赤と緑の灯器で着艦の可不可を表示します。

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係止環。航空機や機材を固定するチェーンを引っ掛けるための物で、飛行甲板や格納庫のあらゆる場所に設置されていますね。

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電源ソケット。電灯艦飾を行う際に使用される物で、艦首にあります。

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満艦飾用のポール。起倒式。

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礼砲用の座金。諸外国を訪問する際に礼砲を実施する場合、ここに設置されます。ひゅうが型にも同様の座金が設けられているようですね。

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マスト灯。こちらもステルス性向上のため角張ったカバーが取り付けられています。

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航空管制室の上部に取り付けられた光学センサー。兵装類の射撃管制用に使用される光学センサーに似ていますが、いずも型ではそれを必要としないため、外部視察用に取り付けられている物と思われます。

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舷梯。

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臨時燃料移送装置。3300kLの燃料と真水を補給することが可能で、これは汎用護衛艦3隻分に相当します。補給はスパンワイヤ方式で行われます。

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艦首の開口部。繋留索を通すための開口部で、非使用時はふさがるようにカバーが取り付けられています。このカバーは就役当時はありませんでした。

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「いずも」のマスト。
 ORN-6Eタカン装置。航空機が発する質問信号に応答するための物で、艦の方位と距離の情報を提供して航空機を誘導します。
◆UHFアンテナ。見通し線圏内の無線通信に使用するアンテナ。
:リンク16用アンテナ。いずも型の戦術データリンクはリンク11とリンク16に対応しています。これも見通し線圏内の通信に使用されます。
ぁNOLQ-3D-1電波探知妨害装置の電波探知用アンテナ。
ァOPX-11敵味方識別装置のアンテナ。OPS-50レーダーと連動し、レーダーが探知した目標に質問信号を送信し、応答信号を受信して敵味方を識別します。
ΑNOLQ-3D-1電波探知妨害装置の電波探知(方向探知)用アンテナ。
АOPS-28C対水上捜索用レーダー。ひゅうが型は対水上捜索がFCS-3に統合されたため航海用レーダーのみ搭載されていましたが、いずも型では再び対水上捜索用レーダーが装備されました。
─OPS-20航海用レーダー。
:ORQ-1Cヘリコプター・データリンク用アンテナ。艦載ヘリの探知した目標の情報を共有するための物で、これにより艦載ヘリを艦のセンサーの延長とすることができます。
:NOLQ-3D-1電波探知妨害装置の電波妨害用アンテナ。両舷に向けて設置されています。
:NORA-1C衛星通信アンテナ。スーパーバード衛星を介した衛星通信に使用するアンテナです。

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OPS-50対空捜索レーダー。Cバンドを使用するアクティブフェイズドアレイレーダーで、ひゅうが型が装備していたFCS-3の射撃管制機能を省き、対空捜索と航空管制に限定したタイプです。

前後左右に向けて1基ずつアンテナが取り付けられており、前方と左舷側に向けたアンテナは艦橋の上に、後方と右舷側に向けたアンテナは航空管制室の上に取り付けられています。

2番艦の「かが」はアンテナがブロック化され艦内から整備が可能なようにした改良型のOPS-50Aに更新されました。

上の写真は前方・左舷向き、下の写真は後方・右舷向けのOPS-50。

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AN/USC-42衛星通信アンテナ。米海軍が運用している衛星通信システムに接続する為のターミナルで、周波数はUHF帯を使用します。艦隊旗艦として米海軍との通信を行うことを想定して装備されています。

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艦首側の高性能20mm機関砲。第1甲板の先端部に設置されています。

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艦尾側の高性能20mm機関砲。艦尾の右舷側スポンソンに設置されています。

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艦首側のMk15 mod31 SeaRam。11連装の発射機に短距離対空ミサイルが収められています。いずも型の武装としては最も射程が長い物ですね。

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艦尾側のSeaRam。艦尾の左舷側スポンソンに設置。

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自走式デコイ発射機。自艦に向けて発射された魚雷に対してデコイを発射し、遠ざけるためのもので、発射時はこの開口部から発射機の先端を出して発射します。

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飛行甲板に搭載されていたA/S32P-25J艦載救難作業車。航空機火災などに備えた艦載消防車で、アメリカ製です。泡消火装置を備え、消火器と消火ホースも備えています。

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高所作業車。アイチコーポレーション製のSP12CSNです。最大地上高は12m。

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クレーン車。コベルコ建機製の25tクレーンで、形式はPANTHER-X250。重量物の移動や岸壁から補給物資を吊り上げる際などに使用します。

これらの車両は格納庫の前方にある搭載車両の車庫に格納されており、この他にもトーイングトラクターやフォークリフト、清掃作業車などが搭載されています。

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左舷側に搭載された複合型作業艇。臨検や海上作業などの際に使用されるもので、1隻だけ搭載されています。

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同じく左舷側に搭載された11m作業艇。こちらは右舷側にも搭載されており、いずも型の搭載艇は3隻となっています。

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飛行甲板上に駐機されていたSH-60K 8418号機。千葉県館山航空基地の第21航空隊に所属する機体です。展示はされていませんでしたが、SH-60Kをもう1機搭載していました。

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格納庫内に駐機されていたSH-60J 8268号機。こちらは用途廃止機で、艦内でのハンドリング訓練などに使用されています。よく見るとエンジンがないことが解ります。

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格納庫内に収納されていたタイダウンチェーンとチョーク。タイダウンチェーンは航空機や機材を固定するためのチェーンで、チョークは航空機の輪留めに使用します。

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艦名プレート。

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艦首の対空番号表記。

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最後に自衛艦旗。


・・・以上、画像を絞って76枚。鉄道員日記がお送りしました。

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