和歌山港・護衛艦いずも艦上にて
和歌山港で7月15日に艦艇広報を行った海上自衛隊のいずも型護衛艦1番艦「いずも」。ヘリコプター搭載護衛艦ということで、SH-60Kを搭載して艦艇広報を行っていました。
今回はその艦艇広報と出入港の際に撮影したSH-60Kの写真を掲載します。SH-60Kは8418号機と8447号機の2機を撮影することが出来ました。艦艇広報で展示されていたのは8418号機のみで、8447号機は出港時に甲板に居ました。
SH-60Kは海上自衛隊が導入している哨戒ヘリコプターです。海上自衛隊では哨戒ヘリとしてSH-60Jを1991年から配備しており、そのSH-60Jの拡張型として開発されました。
2001年3月27日に初飛行し、2005年8月10日に部隊配備されています。SH-60Jに比べて機体そのものが大型化しており、各種センサー類の能力も向上していますね。
SH-60Jはセンサー類など電子機器を多数搭載したためキャビンのスペースに余裕が無く、場合によっては一部の機器を降ろす必要があるなど多用途性に欠ける面がありました。
後継機であるSH-60Kではその問題を解決すべく、機体形状を変更し機内空間の拡大を図っています。これにより災害時により多く人員や物資を輸送することが可能となりました。
またエンジンも強化され、メインローターブレードは新開発の特殊な形状の物になっています。武装としては従来の短魚雷に加えて対潜爆弾や不審船対処用の対戦車ミサイルを搭載可能となっていますね。
更にSH-60Jには無かった着艦誘導支援装置や逆合成開口レーダーなどの新装備も追加され、より多様な状況で活動が可能な哨戒ヘリとなっています。
SH-60Kのスペックは、全長19.8m、全幅16.4m、全高5.4m、メインローター直径16.4m、テールローター直径3.4m。全備重量は10650kgで、最大離陸重量は10872kg。航続距離は800kmとなっています。
SH-60Kの機首回り。機首はSH-60Jよりも延長され、FLIRや電波探知装置などが取り付けられています。機首下面にはHPS-105B対水上レーダーが装備されています。
HPS-105Bは逆合成開口レーダーとしての機能があり、目標に反射したレーダー波のパターンを解析し、画像化することが可能です。これにより従来よりも精度の高い捜索・識別が可能となりました。
機首に取り付けられたFLIR。アメリカ製のAN/AAS-47が搭載されています。このFLIRは赤外線探知装置の機能だけでなく、セミアクティブレーザー誘導の対戦車ミサイルの誘導に使用するレーザーを照射することができます。
FLIRのレンズ面は格納していることが多いのですが、この時は珍しくレンズ面が見える状態で展示されていました。
電子戦支援装置のセンサー。敵艦から照射されたレーダー波やミサイル誘導波などを探知・解析し即座に照射元を割り出す事が可能。前後左右4方向に向けて取り付けられています。
写真は機首右側の物。
AN/AAR-60ミサイル警報装置のセンサー。紫外線光学パッシブ式のミサイル警報装置で、接近するミサイルのロケットモーターが発する紫外線を探知し、警報を発します。こちらも機首右側の物。
機首左側の電子戦支援装置及びAN/AAR-60のセンサー。
胴体後部右側の電子戦支援装置センサー。
機首の左側に取り付けられたデータリンク用アンテナ。母艦とデータリンクを行い、SH-60Kのセンサーが探知した情報を共有することによってSH-60Kを母艦のセンサーの延長とする事が出来ます。
同様のデータリンクアンテナは後部にも搭載されていますね。
コクピット。アナログの計器が並んでいたSH-60Jと比べると大幅にグラスコクピット化されており、飛行情報統合表示装置用の15インチディスプレイ5基と戦術情報処理表示装置用の大型ディスプレイが取り付けられています。
飛行情報統合表示装置では飛行情報や航法情報、エンジン情報などが表示され、戦術情報処理表示装置では戦術情報や地図、レーダーやFLIRなど各種センサーから得た情報が表示されます。
なおコクピット回りには防弾板が取り付けられているようです。
キャビン内に搭載されたHQS-104ディッピングソナー。海面上でホバリングし、海中に吊り下げて使用します。従来よりも高精度の探知が可能なように低周波ソナーとされました。
低周波ソナーには大型の機器が必要ですが、機内搭載のため小型化する必要があり、送受信機は折りたたみ式となっています。ディッピングソナーの他にはソノブイを使用することも可能で、ディッピングソナーは狭い範囲で高精度の捜索に向き、ソノブイは広範囲の捜索に向いています。
ソノブイを使用する場合は機体左側にソノブイランチャーが搭載されます。SH-60Jではソノブイの情報を母艦に中継し、母艦が解析を行っていましたが、SH-60Kでは自機で解析を行うことができるようになりました。
なおキャビンは従来よりも前方に33cm、上方に15cm拡大しています。これによって搭乗可能乗員数が8名から12名に増加しました。
キャビン左側のバブルウインドウ。この窓の内側はセンサーマン席となっており、センサーマンが外部を見やすいように外側にせり出しています。SH-60Jでは丸形のバブルウインドウでしたが、SH-60Kではより面積の広い角型のバブルウインドウとなりました。
ソノブイのランチャーはバブルウインドウの後ろに取り付けられますね。
チャフ・フレア発射装置及びフライトデータレコーダー。
左側ウエポンパイロン。従来のものよりも大型となり、多様な武装を搭載する事が可能となりました。対戦車ミサイルはここにランチャーを介して搭載されます。
格納時などはこのパイロンをはね上げて折りたたむことが可能。
右側ウエポンパイロン。SH-60Jのウエポンパイロンは左右ともこのサイズでした。SH-60Kの右側ウエポンパイロンはドアの開口部が大きくなったため後方に移動しています。
AN/ASQ-81(V)磁気探知機。機体尾部に搭載されており、浅い深度で航行している潜水艦が生じる地磁気の乱れを探知するための磁気探知機です。使用する際は機体の機器類などから干渉されるのを避ける為、ワイヤーで機体から離し曳航する形で使用されますね。
ホイストケーブル。捜索救難任務などで使用される装備で、最大釣り上げ能力は600lbs(272kg)。隊員の降下や要救助者の吊り上げに使用されますね。
メインローター。このメインローターは高性能メインローターシステムとして新規開発されたもので、前縁・翼端を除いて複合素材を使用しています。SH-60Jとローター直径は同じですが、ホバリング可能重量が1t増加していますね。
メインローター先端。内側から10度の上半角、20度の下半角、50度の下半角が付けられています。また写真では解りづらいですが40度の後退角が付けられています。
この形状によって翼端から発する渦の干渉による抵抗を抑えることに成功しました。なおこの翼端部が空気抵抗を生むため最大速力はSH-60Jよりも9kt低下しています。
エンジン。エンジンはSH-60Jが搭載していたT700-IHI-401Cから改良型のT700-IHI-401C2に変更されました。離昇出力はSH-60Jの1800shpから2145shpとなっています。
テールローター。テールローターそのものを折りたたむことは出来ませんが、尾部と水平尾翼は折りたたみ可能です。全て折りたたむと非常にコンパクトになりますね。
左側の主脚。上部のドーナツ型の穴は搭載機器冷却用の空気取り入れ口です。SH-60Jでは1個でしたが、SH-60Kでは搭載機器が増えたため2個となりました。
右側の主脚。右上に移っているのは着艦誘導支援装置の機上部で、母艦の誘導センサーが機上部の赤外線マーカーを追尾し、リフレクターにレーザーを照射して距離を計測して自動で着艦することを可能としています。
尾輪。
艦外から撮影した8418号機。千葉県館山航空基地の第21航空群第21航空隊に配備されている機体。この機体は以前にも護衛艦「あけぼの」の艦艇広報の際に撮影したことがあります。その時も和歌山港でした。当時は長崎県大村航空基地の第22航空群第22航空隊に配備されていましたね。
飛行甲板で展示を行う8418号機。機体左側に回ることは出来ませんでしたが、各部をじっくり見られました。ここまでの写真はすべて8418号機を撮影したものです。
一方こちらは8447号機。この機体も第21航空隊所属。こちらは艦艇広報時には見かけず、出港時にはじめて撮影しました。格納庫にも居なかったので、開放されていなかった航空機整備庫にいたのかな?
一週間後の名古屋港での艦艇広報では展示されたようです。
艦尾側の8418号機と。
タイミング良く降りてきた県立医大のドクターヘリとSH-60K。大規模災害時にはドクターヘリがいずもに降りることもあるでしょうね。
・・・以上、名古屋では陸自のUH-60JAも・・・ズルい(笑)鉄道員日記がお送りしました。