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Channel: 鉄道員日記(ぽっぽやにっき)
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海上保安庁 いわみ型巡視船 PL73「きい」和歌山港

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和歌山港にて

和歌山港で撮影した海上保安庁のいわみ型巡視船3番船「きい」。今年3月の撮影です。先代「きい」から2014年に任務を引き継いだ地元の巡視船ですが、撮影はこの時が初めてでした。

いわみ型巡視船は2013年から運用を開始している海上保安庁のPL型巡視船で、公称船型は1000トン型。1970年代に建造されたしれとこ型巡視船の後継です。

海上保安庁では1970年代に排他的経済水域の制定に対応すべくしれとこ型28隻を一挙に建造し、大型巡視船としては異例の大規模整備となりました。

それらの耐用年数が2000年代から2010年代に限界を迎えることから、更新する新たな1000トン型PLが必要とされていました。

2000年代の1000トン型PLとしてはあそ型巡視船、はてるま型巡視船が存在しますが、どちらも警備能力を重視し滑走船形・アルミ合金の船体を採用した巡視船でした。

これらは警備能力は十分な物の、しれとこ型は警備の他に捜索救難にも用いられていたことから、汎用性を重視した巡視船で置き換えることとされました。

そこで建造されたのがくにがみ型巡視船でしたが、汎用性を求めた結果として建造費が高騰してしまい、量産は困難と考えられその代わりに性能を犠牲にしてコストダウンを図ったのがこのいわみ型巡視船です。

船体は排水量型、船質は鋼とくにがみ型と同様に従来の方式に戻っています。またあそ型、はてるま型、くにがみ型はヘリコプター甲板を備え航空機運用能力がありましたが、いわみ型ではコスト削減のため省かれています。

それに伴ってフィンスタビライザーも省かれており、減揺装置はビルジキールのみとなっています。船首にはハルバスバウが設置されました。

エンジンもコスト削減のため出力が抑えられており、ディーゼル2基で出力は8000馬力。推進機関はスクリュープロペラ2軸で最大速力は21ノット以上。

あそ型・はてるま型が30ノット以上、速力要求を抑えたくにがみ型でも25ノット以上なので、さらに速力要求が抑えられていることが解りますね。

武装は船首にブッシュマスター 30mm機関砲を1基搭載しており、この機関砲は赤外線捜索監視装置と連接によって射撃管制されており、荒天時でも正確に目標を照準することができます。

また高圧放水銃が主砲の前方に搭載されており、これは消火用と共に非致死性兵器として使用されます。搭載艇は高速警備救難艇2隻と高速複合警備艇2隻。

東日本大震災での支援活動の教訓から、5・6番船は災害対応能力強化型とされ3・4番船も設計変更されました。このタイプは造水能力を強化し、給水・給油装置、多目的クレーンを追加装備しています。

いわみ型巡視船のスペックは総トン数1250トン、全長92m、全幅11m、深さ5m、最大速力21ノット以上、乗員42名と言う物になっています。

現在6番船まで建造されていますが、昨今の尖閣事案の緊迫化により一旦は2隻で建造を終了したくにがみ型の建造を再開することとなり、いわみ型が今後も建造されるかどうかは不明となっています。

写真の巡視船「きい」は三井造船玉野事業所で建造され、2014年7月31日に第5管区海上保安本部和歌山海上保安部に配備されています。この「きい」の配備より、先代のしれとこ型巡視船4番船「きい」は第4管区の名古屋海上保安部に転出し「あつみ」と名称変更された後今年10月21日に退役しています。

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後方から。ヘリ甲板は備えていませんが、要救助者の移送や曳航などを考慮して後部甲板はなるべくクリアに設計されています。いわみ型の曳航能力は強力で、くにがみ型を上回るものとなっています。

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主砲と船橋、マスト。

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船橋。船橋はくにがみ型がと同様に指揮機能の集約を行っており、操舵室の後方には作戦指揮所が配置されています。また通信区画や武器管制区画もこの中に設けられています。

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船首の高圧放水銃。この放水銃は消防船「ひりゆう」が船橋委装備している物の圧力を高めた物で、毎分2万リットルの放水能力を備えています。

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主砲。ブッシュマスター 30mm機関砲で、アメリカのアライアント・テックシステムズが製造しています。メーカー側名称はMk44 ブッシュマスター供

チェーンガン方式で作動する機関砲で、口径は30×173mm。発射速度は毎分200発。最大射程は艦載型で5100m。米空軍のAC-130Jや米海軍の一部艦艇、それ以外の国の装甲戦闘車などで採用されています。

海上保安部ではあそ型巡視船から搭載される予定でしたが、計画段階で九州南西海域工作船事件が発生しより長射程で威力の高い40mmボフォースMk3に変更され、実際にははてるま型巡視船から搭載されました。

はてるま型の次級であるくにがみ型巡視船はJM61-RFS 20mm多銃身機関砲を搭載していますが、13番船以降はこのブッシュマスター兇鯏觝椶垢詬縦蠅箸覆辰討い泙后

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赤外線捜索監視装置と遠隔監視採証装置。奥の1段高い位置に設置されているのが赤外線捜索監視装置で、赤外線カメラとしての機能の他に、主砲の管制にも使用されます。

遠隔監視採証装置はレーザーレーダーを使用した監視装置で、レーザーを照射し目標のスキャンを行い、夜間における通行船舶の監視を行うことが出来ます。

従来その役割は赤外線監視装置が行っていましたが、遠隔監視採証装置はより分解能が高く探知距離も長くなっています。

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マストの探照灯とスピーカー。

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マストトップのレーダー類。

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上部構造物横の停船命令等表示装置。LEDによる電光掲示板です。

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左舷側に搭載された高速警備救難艇。

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こちらも左舷側の高速複合警備艇。反対側にも同型の物が搭載されているのが見えますね。1・2番船と3番船以降では搭載方法が異なります。

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舷梯を吊り下げていたユニッククレーン。災害対応能力強化型で追加装備された多目的クレーンはこれではなく、恐らく高速複合警備艇の間にある物がそれなのではないかと思います。

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煙突のコンパスマーク。煙突は舷側排気をやめ左右に並列で配置されており、曳航時の後方視界を確保しています。

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最後に船尾の船名と船籍港表記。


・・・以上、昨日書くつもりだった記事。ef_end_63がお送りしました。

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