横浜港にて
今年10月17日に横浜大さん橋で艦艇広報を行った海上自衛隊のいずも型護衛艦1番艦、DDH-183「いずも」。観艦式の前日に行われた艦艇広報に自分も参加してきました。
いずも型護衛艦はしらね型護衛艦の代替として海上自衛隊が運用しているヘリコプター搭載護衛艦で、現在の所海上自衛隊最新鋭・最大級の艦艇となっています。前級のひゅうが型護衛艦の拡大改良型として設計されました。
簡単に言ってしまえば、いずも型はひゅうが型を拡大し航空機運用能力や多用途製を強化し、一方で個艦戦闘能力をほぼ自衛用の物に限定した護衛艦です。
船体設計はひゅうが型と同様に第1甲板を全通甲板とし、上部構造物は右舷側に寄せたアイランド方式の配置となっています。第3~第5甲板は航空機格納庫であり、間に挟まれた第2甲板はギャラリーデッキとして居住区画や司令部区画、医療区画などが設置されています。
航空機格納庫と飛行甲板である第1甲板を結ぶエレベータは前後に2基が設置され、艦首側の第1エレベータはインボード方式、艦尾側の第2エレベータは右舷側に突き出たデッキサイド式としています。
船体内には第8甲板まで設けられており、格納庫下の第6甲板が応急甲板とされこれ以下の甲板にも居住区や食堂、発電機室などが設けられています。
主機関は巡航用と高速用を切り替えて使用するCOGAG方式を採用し、ゼネラル・エレクトリック製LM2500IECを4基搭載しています。
LM2500は以前から護衛艦に採用されてきたガスタービンエンジンですが、いずも型に導入されたのは燃料制御を機械式から電子式に変更したLM2500IECで、単機出力が25000馬力から28000馬力に向上しています。
推進機関はスクリュープロペラ2基2軸で、最大速力は30ノット。発電機は1基当たり3400キロワットの出力を持つLM500G07が4基搭載されています。
艦自体の戦闘能力は、ひゅうが型が単艦での戦闘能力を持っていたのに対し、いずも型ではヘリコプターの運用と部隊指揮能力に重点を置いたため自衛用火器程度しか搭載していません。
そのため単艦での運用は想定されて居らず、護衛を行う艦隊を伴って運用することを前提として設計されています。搭載兵器は近接防御火器であるMk15 ファランクスとMk15 mod.31 SeaRAMの2種類。
その他曳航式デコイ、自走式デコイ、投写型静止式ジャマーといった対魚雷防御用装備も搭載されています。ひゅうが型に搭載されていたような対空ミサイルや魚雷発射管はありません。
レーダーはひゅうが型のFCS-3から射撃管制機能を省き、対空捜索と航空管制に特化したOPS-50を装備しており、このレーダーはCバンドを使用した固定式アクティブフェイズドアレイレーダーとなっています。また対水上レーダーとしてはOPS-28、航海レーダーとしてはOPS-20を装備していますね。
ソナーはいずも型自らがアクティブ対潜戦を展開する必要性が低いため、ひゅうが型のOQQ-21の側面アレイを省き、艦首アレイのみとしたOQQ-23が搭載されています。これより最低限の対潜探知能力と対魚雷防御能力を確保しています。
航空機運用能力はひゅうが型を元に大幅に増強され、飛行甲板の面積が1.5倍に拡大されたためヘリ発着スポットは1つ増えて5カ所となっています。その他右舷側にも駐機用スポットが1カ所設置されています。
指揮統制能力もひゅうが型から強化されており、ギャラリーデッキに戦闘指揮所と旗艦用司令部作戦室、多目的室がひゅうが型より拡大されて設置されており、多目的室には100名程度の統合任務部隊司令部を置くことが可能となっています。データリンクはリンク11とリンク16に対応しています。
その他様々な任務に対応するため、輸送艦や病院船としての機能もある程度付与されています。輸送艦機能としては30トン以上の車両に対応できるランプを右舷に備え、隊員300名と3トン半トラック50台の輸送が可能とされています。補給艦としての機能もあり、汎用護衛艦3隻分の燃料と真水を補給することができます。
病院船機能はましゅう型補給艦の物をベースとしており、35床の入院設備があります。多目的室を戦闘治療所として使用する事も考慮されており、陸上自衛隊の野外手術システムを搭載すれば更に医療機能を増強することができます。
いずも型護衛艦は基準排水量19500トン、全長248m、全幅38m、深さ23.5m、喫水7.3mと言うサイズで、最大速力は前述の通り30ノット。
現在いずも型護衛艦は2隻が建造され、写真の1番艦「いずも」は2012年1月27日に起工、2013年8月6日に進水、2015年3月25日に就役しています。建造はIHIマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で行われました。
就役後横須賀基地の第1護衛隊群第1護衛隊に配備されています。これにより同隊に配備されていたひゅうが型1番艦「ひゅうが」は舞基地の第3護衛隊群に転属となり「しらね」が退役しています。
2番艦は「かが」と命名され、現在は進水を済ませて艤装中、2017年3月に就役する予定となっています。
この日は観艦式の事前公開として横浜大さん橋で広報を行っており、自分も和歌山から夜行バスに乗って見学に行ってきました。最新鋭の護衛艦とあって目の前に現れた時は思わず興奮してしまいましたね。
多くの人が見学に来ていたため乗艦まで時間が掛かるかと思いましたが、思いの外スムーズに列が進み、さほど長い時間並ぶ事もありませんでした。
上部構造物。前方に艦橋があり、その間に前部・後部の煙突、後部に航空管制室が設置されています。ステルス性向上の為、極力傾斜を付けた平面で構成され、写真ではよく見えませんが、煙突も多角形化されるなど徹底した対策が行われています。
上部構造物は2基の煙突の間で分割されているのですが、ステルス性向上のため隙間にカバーが掛けられており一体化しているように見えますね。
後方から撮影した上部構造物。艦橋とよく似た航空管制室が設置されており、マストがなければどちらか前方か解りませんね。
前方から撮影した上部構造物とマスト。ここで各種電子装備を解説しておきます。
ORN-6E タカン装置。艦載ヘリコプターの誘導用に距離と方位の情報を発信しています。
◆UHF通信アンテナ。見通し圏内の無線通信に使用されます。
:リンク16アンテナ。データリンクのリンク16の通信に使用するアンテナです。周波数はUHF帯を使用。
ぁNORQ-3D-1 電子戦装置(ESM)。NORQ-3D-1の電波探知用アンテナで、一番上の円筒形のアンテナは無指向性アンテナ、下の3基は方向探知用のアンテナと思われます。方向探知用は全周を警戒できるように後方にも設置されていますね。
ァOPX-11 敵味方識別装置。円周型のアンテナを使用した敵味方機器別装置(IFF)で、対空レダーと連携して敵味方の識別を行います。
ΑOPS-28対水上レーダー。Cバンドを使用し対水上捜索の他に低空の捜索を行うことも可能です。
АOPS-20航海レーダー。OPS-28が苦手とする近距離の対水上捜索を行うレーダーで、あきづき型・ひゅうが型では対水上レーダーとして発展したC型が搭載されていましたが、いずも型では再び対水上レーダーはOPS-28、航海レーダーはOPS-20という構成に戻っています。
─ORQ-1C 艦載ヘリデータリンク用アンテナ。艦載ヘリとのデータリンク用のアンテナで、ヘリから送られた水上捜索情報や潜水艦の情報などを受信します。航空機運用能力に重点を置いたいずも型においては非常に重要な物ですね。
:NORA-1C 衛星通信アンテナ。スーパーバード通信衛星を経由し陸上基地や他の艦艇と通信を行う為のアンテナです。
:NORQ-3D-1 電子戦装置(ECM):こちらは電子戦装置の電波妨害を行う為のアンテナで、飛来するミサイルなどに対するソフトキル手段でもあります。左右で設置高さが異なるのが解りますね。
:OPS-50対空捜索レーダー前述の通りひゅうが型のFCS-3から武器管制性能力を省いた物で、ミサイル誘導用のXバンドイルミネーターを撤去しています。艦橋上部には前方と左舷に向けて設置されており、航空管制室の上部に後方と右舷に向けて設置されていますね。
:NORA-7 衛星通信アンテナ。こちらもスーパーバード通信衛星用で、上部構造物の前後に設置されています。
:インマルサット用アンテナ。こちらはインマルサット通信衛星との通信用アンテナで、就役後に搭載されました。
:NORQ-1衛星通信アンテナ。これもスーパーバード通信衛星用であり、NORA-1とNORA-7がXバンドを使用するのに対し、こちらはKuバンドを使用します。因みに稼働中のスーパーバード通信衛星は全てKuバンドの中継機を搭載しています。
◆UHF通信アンテナ。見通し圏内の無線通信に使用されます。
:リンク16アンテナ。データリンクのリンク16の通信に使用するアンテナです。周波数はUHF帯を使用。
ぁNORQ-3D-1 電子戦装置(ESM)。NORQ-3D-1の電波探知用アンテナで、一番上の円筒形のアンテナは無指向性アンテナ、下の3基は方向探知用のアンテナと思われます。方向探知用は全周を警戒できるように後方にも設置されていますね。
ァOPX-11 敵味方識別装置。円周型のアンテナを使用した敵味方機器別装置(IFF)で、対空レダーと連携して敵味方の識別を行います。
ΑOPS-28対水上レーダー。Cバンドを使用し対水上捜索の他に低空の捜索を行うことも可能です。
АOPS-20航海レーダー。OPS-28が苦手とする近距離の対水上捜索を行うレーダーで、あきづき型・ひゅうが型では対水上レーダーとして発展したC型が搭載されていましたが、いずも型では再び対水上レーダーはOPS-28、航海レーダーはOPS-20という構成に戻っています。
─ORQ-1C 艦載ヘリデータリンク用アンテナ。艦載ヘリとのデータリンク用のアンテナで、ヘリから送られた水上捜索情報や潜水艦の情報などを受信します。航空機運用能力に重点を置いたいずも型においては非常に重要な物ですね。
:NORA-1C 衛星通信アンテナ。スーパーバード通信衛星を経由し陸上基地や他の艦艇と通信を行う為のアンテナです。
:NORQ-3D-1 電子戦装置(ECM):こちらは電子戦装置の電波妨害を行う為のアンテナで、飛来するミサイルなどに対するソフトキル手段でもあります。左右で設置高さが異なるのが解りますね。
:OPS-50対空捜索レーダー前述の通りひゅうが型のFCS-3から武器管制性能力を省いた物で、ミサイル誘導用のXバンドイルミネーターを撤去しています。艦橋上部には前方と左舷に向けて設置されており、航空管制室の上部に後方と右舷に向けて設置されていますね。
:NORA-7 衛星通信アンテナ。こちらもスーパーバード通信衛星用で、上部構造物の前後に設置されています。
:インマルサット用アンテナ。こちらはインマルサット通信衛星との通信用アンテナで、就役後に搭載されました。
:NORQ-1衛星通信アンテナ。これもスーパーバード通信衛星用であり、NORA-1とNORA-7がXバンドを使用するのに対し、こちらはKuバンドを使用します。因みに稼働中のスーパーバード通信衛星は全てKuバンドの中継機を搭載しています。
上の写真の各種アンテナ類とは少し離れて設置されているAN/USC-42 衛星通信アンテナ。アメリカ海軍が運用している衛星通信システムに接続する為のアンテナで、海上自衛隊ではヘリ搭載護衛艦の他にイージス艦などが同様のアンテナを搭載しています。
船尾。大きすぎて船尾方向からは全体を入れて撮影する事ができませんでした。船尾に突き出た両舷のスポンソンにはファランクスとSeaRAMが装備されていますね。
また搭載艇として11m作業艇が格納されているのが見えます。11m作業艇は左舷側のほぼ同じ位置にも搭載されているほか、左舷側中央付近には複合型作業艇も1隻搭載されています。
Mk15 mod.31 SeaRAM。いずも型唯一の対空ミサイルで、従来使用されてきたファランクスの20mm機関砲の代わりにRIM-116 RAMの11連装発射機を組み合わせた物。
RIM-116はAIM-9の弾体とFIM-92のシーカーを元に開発された近接防空ミサイルで、誘導方式はパッシブレーダー誘導と赤外線画像誘導の組み合わせとなっています。
射程はファランクスの最新のブロック2で400mから15kmとなっており、従来のファランクスが最大射程4km・有効射程1km程度だったのに対し十分自艦に影響が出ない範囲で撃破する事が可能となりました。
船尾に並んだファランクスとSeaRAM。ファランクスは従来から採用してきた近接防空火器で、いずも型では廃艦から転用されたブロック1Aが使用されている物と思われます。
ファランクス、SeaRAM共に2基が搭載されており、もう1基のファランクスは飛行甲板の先頭部に設置されていますね。