横浜港にて
横浜港の新港埠頭で艦艇広報を行った海上自衛隊のASR-403 潜水艦救難艦「ちはや」。前回は訓練支援艦「くろべ」を掲載しましたが、その隣に係留されていたのがこの「ちはや」でした。
潜水艦救難艦「ちはや」は艦種名の通り潜水艦の事故に備えて建造された補助艦艇で、海上自衛隊2隻目の潜水艦救難艦である「ふしみ」の後継として建造されました。
この「ちはや」より以前に潜水艦救難母艦「ちよだ」が建造されており、「ちはや」は「ちよだ」の拡大改良型とされています。ただし「ちよだ」の潜水艦に補給を行う母艦機能はありません。
船体は「ちよだ」よりも大型化し、また艦中央部にある深海救難艇・人員輸送カプセルを投入する為のセンターウェルに扉を取り付けて速力を向上させています。
速力の向上は潜水艦の遭難現場へ急行するために必要な課題であり、バルバスバウも設置されました。一方で潜水艦母艦機能は廃止され、代わりに医療設備を強化しています。
救難のための主要な装備には深海救難艇(DSRV)、無人潜水装置(ROV)、人員輸送カプセル(PTC)があり、艦橋後方の半層上に救難指揮所が設けられています。
医療区画は手術室やX線撮影室が新設されるなど充実しており、また阪神淡路大震災を教訓として災害派遣時の医療支援も考慮されています。
機関は三井造船12V42M-Aディーゼルエンジン2基を搭載しており、出力は19500PS。洋上での定位保持が必要とされる為、推進器は可変ピッチプロペラ2軸で艦首と艦尾にそれぞれサイドスラスターを2基ずつ装備しています。
基準排水量は5450t、全長128m、全幅20m、深さ9m、喫水5.1mで最大速力は21ノット。航続距離ヒア巡航時で6000海里となっています。
建造は三井造船玉野事業所で行われ、起工は1997年10月13日、進水は1998年10月8日、就役は2000年3月17日です。
因みにこの「ちはや」は以前和歌山港で艦艇広報を行ったことがあり、その際に撮影したことのある艦です。そして呉地方隊展示訓練で乗るはずだった艦なのですが、台風で中止になってしまいました。
艦中央部に搭載されたDSRV。普段は艦橋構造物後方の格納庫に格納されており、使用時にこのようにセンターウェル上に引き出します。
DSRVは2個の蓄電池を動力源としており、内部は3つの耐圧球で構成されています。乗員は2名で潜水艦乗員12名を搭乗させることが可能。連続潜航時間は約5時間。
「ちよだ」もDSRVを搭載しておりほぼ同じサイズですが、「ちはや」ではDSRVの搭載方向が艦尾向きに変更されているため互換性はなく、DSRVはそれぞれの搭載艇扱いとなっています。
DSRVの活動支援や各種海中作業の為に搭載されているROVは「ちよだ」には無かった物で、最大潜航深度2000m、重量3トン、最大速力3ノットとなっています。
PTCは艦上減圧室と共に深海潜水装置を構成しており、飽和潜水で潜水士を進出させる為の装備です。人員輸送カプセルは減圧室と連結され、減圧室で加圧された潜水士を深海まで送り届けます。
「ちはや」の潜水士は2008年5月21日に450mまで潜水し当時の日本新記録・世界第2位記録を達成しています。
「ちはや」の揚降装置。「ちよだ」では油圧がメインでしたが、「ちはや」では電動がメインとなりました。
後部甲板下の作業甲板。船体後部は飛行甲板となっており、MH-53Eも着艦可能な広さが確保されています。
錨。アドミラルティー形で3400kg。
艦番号。
「ちよだ」と「くろべ」の並び。どちらも和歌山港で見学したことのある艦ですね。「ちよだ」の幅の広さが解ります。
・・・以上、この時は人が多かった。ぽっぽやがお送りしました。