アジア太平洋トレードセンターにて
昨年3月15日にアジア太平洋トレードセンターで開催されたOSAKA防衛・防災フェスタ。その時のネタを色々と掲載してきましたが、今回で最後となります。
OSAKA防衛・防災フェスタでは3自衛隊が展示を行っており、航空自衛隊は写真のJM901ペトリオットミサイル発射機を展示していました。
パトリオットミサイルシステムはアメリカのレイセオン社が開発した広域防空用地対空ミサイルシステムで、航空自衛隊では「ペトリオットミサイル」と呼称していますが、この記事ではパトリオットと書くこととします。
それまで広域防空を担っていたナイキミサイルシステムの後継として開発され、最も最初のタイプは1984年にアメリカ陸軍に引き渡されました。以来、地上装置・ミサイル共に改良が続けられています。
地上装置は車両による移動式のシステムとなっています。写真の発射機を初めとする複数の装置で構成されており、それらを無線・有線で連動させて運用されています。
システムを構成する機材は発射機、レーダー装置、射撃管制装置、情報調整装置、無線中継装置、アンテナマストグループ、発電機からなり、実際に発射サイトを展開する場合は更に整備車両や再装填装置、補給車両などがこれに随伴します。
発射機はM901及びM902が開発されており、航空自衛隊に納入されている物は頭にJが付いてJM901・JM902という形式名称となります。
JM901はPAC-3弾以外のミサイルに対応している発射機で、JM902はPAC-3弾を含む全てのミサイルを発射することができます。発射時には無人となり、射撃管制装置から遠隔操作されます。
地上装置は最初のタイプであるBASIC形態からPAC-1、PAC-2、QRP、PAC-3形態へと改良と能力上が図られており、使用されるミサイルもSTD弾からSOJC、PAC-2、GEM、GEM+、PAC-3弾へと発展しています。
パトリオットミサイルシステムに使用されるミサイルはPAC-3弾とそれ以外で大きく異なっており、弾体のサイズから誘導方式までミサイルは全くの別物ですね。
航空自衛隊は1989年度から導入を開始しており、1996年度に全国の高射部隊に配備が完了しました。PAC-3は2006年度に配備が始まり、現在全国に配備されています。
写真のJM901発射機は滋賀県の饗庭野分屯基地に所在する第4高射群第12高射隊が保有する物です。
発射機に搭載されたSTD弾の発射筒。もちろん訓練弾です。
PAC-3弾以外はTVM方式というミサイルの誘導方式が採用されており、これは事前に飛行経路をプログラムし発射、発射後にレーダー装置からTVMレーダー波を目標に照射、その反射波をミサイルが捉えてレーダー装置に情報を送信、その情報を射撃管制装置に送り、誘導計算などの処理を行ってレーダー装置から誘導情報をミサイルに送信し目標に近づき、終末誘導では反射波を追って目標に命中します。
この方式はレーダーからの距離が離れるのに伴って低下する精度をミサイルからの情報で補えるという利点があり、電子妨害に対しても射撃管制装置が対応するため強く、ミサイル本体の誘導装置を簡素化する事もできます。
なおPAC-2弾は直接命中させるのではなく、近接信管を使って目標近くで爆発し破片により目標を破壊する方式です。
PAC-3弾の発射筒。こちらも訓練弾。
PAC-3弾は元々対弾道ミサイル用のERINTミサイルとして開発されていたミサイルであり、パトリオットのシステムと組み合わせてPAC-3弾となりました。
そのためそれまでのミサイルとは大きく異なり、ミサイルの直径が細くなったため1つの発射筒に4発を格納する事ができます。従来は1つにつき1発だったため4倍の搭載量となりました。
誘導方式は中間誘導までは事前プログラムと射撃管制装置からの指令という従来と同じ方式ですが、終末誘導がミサイル自身のレーダーで目標に向かうアクティブレーダー誘導となっています。
PAC-3弾は目標の確実な破壊を重視し目標に直撃して破壊する方式を採用しています。また姿勢制御には動翼だけでなくサイドスラスターを使用し高高度での機動性を高めています。
航空機や巡航ミサイルなどに対処する場合は、直撃直前に24個の金属ペレットを放出するリハリティ・エンハンサという弾頭を使用します。ただしミサイルの小型化でPAC-2弾に比べると航空機などに対する射程は半減しています。
地上装置のPAC-3形態は3段階に分けて開発が行われ、PAC-3/Config.1とPAC-3/Config.2は従来のミサイルを使用していました。PAC-3弾はPAC-3/Config.3から採用されています。
上記の通りJM901発射機ではPAC-3弾を物理的に搭載することは出来ても発射は不可能で、写真は「載せてるだけ」の状態です。
左右に並んだSTD弾とPAC-3弾の発射筒。形状がかなり違うので外見からの識別は簡単ですね。
ケーブル接続部。JM902発射機は従来のミサイルとPAC-3弾の両方に対応するため写真より多くのケーブルが取り付けられています。
トレーラー前方に搭載された15kWの発電機。
アウトリガー。ミサイル発射時は車体を安定させるためトラクターを切り離しアウトリガーで上昇させます。
左右後方から撮影したJM901発射機。
展示されるJM901発射機。北朝鮮ミサイル発射対応などでメディアに出る機会も多いので、多くの人が見学していました。
牽引用のトラクターと接続された移動形態。手前の青い車は空自の業務用車です。
説明書き。
トレーラーと発射機の銘板。トレーラー部は1994年製ですが、発射機は2009年製という事で一度載せ替えたのでしょうね。
・・・以上、タイトルが長い。ぽっぽやがお送りしました。