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Channel: 鉄道員日記(ぽっぽやにっき)
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航空自衛隊 JM902ぺトリオットミサイル発射機@舞鶴基地

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舞鶴基地にて

7月27日に行われた海上自衛隊舞鶴基地サマーフェスタ。岸壁の上では陸上自衛隊と航空自衛隊が車両の展示を行っており、今回掲載するのもその一つ。

航空自衛隊はパトリオットミサイルシステムのJM902発射機と待機車1号を展示していました。待機車1号は前回掲載しましたね。

パトリオットミサイルはアメリカのレイセオン社が開発した広域防空用の地対空ミサイルシステムで、航空自衛隊では「ペトリオット」と呼称していますが、この記事では「パトリオット」と書くことにします。

パトリオットミサイルの発射システムは車両による自走式のシステムで、複数の機材から構成されており無線・有線による接続で連動しています。

発射システムはレーダー装置・射撃管制装置・情報調整装置・無線中継装置・アンテナマストグループ・発射機・発電機で構成され、高射部隊の展開時には弾薬運搬車や整備車両、人員輸送車なども随伴します。

レーダー装置はAN/MPQ-53もしくはAN/MPQ-65多機能フェイズドアレイレーダーを使用し、目標の捜索・追尾の他に、敵味方識別、ミサイル誘導も行います。

射撃管制装置はレーダーからの情報を処理し射撃命令を下す装置で、最大16基の発射機を接続でき、同時に8基の発射機を接続することが出来ます。運用中は二名のオペレーターが操作を行います。

情報調整装置は上位組織と射撃管制装置との間に置かれる装置で、他の防空システムや早期警戒管制機と連接することが可能です。無線中継装置は情報調整装置と射撃管制装置の間の無線中継を行う装置。

アンテナマストグループは単体で無線通信を行えない射撃管制装置、情報調整装置、無線中継装置の外付けアンテナとなる装置で、それぞれに接続されて運用されます。

発射機はM901発射機とM902発射機の二種類があり、M901発射機はPAC-3弾以外のミサイルに対応している発射機で、M902発射機は全てのミサイルに対応しています。射撃管制装置とは無線で連接。航空自衛隊が導入している発射機はそれぞれ頭にJが付いてJM901、JM902という型式となっています。

地上装置の形態は時台と共に変化しており、当初のBASIC形態からPAC-1、PAC-2、QPR、PAC-3と発展してきました。航空自衛隊では現在PAC-2形態とPAC-3形態を導入しています。

特にPAC-3形態の地上装置とPAC-3弾は弾道ミサイル防衛において終末航程に対応するため、報道などでも登場する機会が多くかなり有名なのではと思います。

PAC-3形態は弾道ミサイルへの対処能力を本格化するため能力向上を図った形態で、細かく分けるとPAC-3/Config.1~3に分類されます。

PAC-3/Config.1はミサイル本体にPAC-2弾を使用しレーダー装置、射撃管制装置、情報調整装置など銭湯管理・指揮・通信機能の改良を行った形態。

PAC-3/Config.2は目標探知・識別能力と対レーダーミサイル対処能力の向上とLINK16データリンクシステムへの対応を行った形態。

PAC-3/Config.3は新型のPAC-3弾を使用しレーダーの探知距離と角度分解性能を向上、通信能力の向上により射撃管制装置と発射機を最大30km離して設置する事が可能となった形態です。

航空自衛隊では1989年度から地対空誘導弾ナイキJの後継として導入が始まりました。教育部隊である高射教導隊から配備が始まり、1996年度に全国の部隊に配備が完了しました。

現在航空自衛隊の実働高射部隊は6個高射群24個高射隊が編成されており、北海道から沖縄まで全国各地に配置されています。1個高射隊は5基の発射機を保有。

PAC-3については2007年に第1高射群第4高射隊から配備が始まり、首都圏・近畿・中部・九州の防空を担う第1・2・4高射群には配備が完了しています。現在は沖縄の防空を担う第5高射群への配備が進められています。

これまで北朝鮮の弾道ミサイル発射に対応するため何度も海自のイージス艦と共に実戦配備に就いていますね。そのこともあってかなりメジャーな装備品と言えます。

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後方から撮影したJM902発射機。発射機を使用する際はサスペンションやタイヤのたわみによる動揺や横転を防ぐ為、牽引車を切り離しアウトリガーで車体を浮かせます。

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右側面。地対空ミサイルの車両らしい見た目をしていますね。

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PAC-3訓練弾。PAC-3は対弾道ミサイル用ミサイルとして開発されていたERINTミサイルとパトリオットミサイルの発射システムを組み合わせた物です。

全長5.2m、弾体直径0.25m、重量315kgとそれまでのPAC-2シリーズの弾薬と比べるとかなり細身で軽量となっており、コンテナ1基に4発を収納する事が出来ます。

従来型の弾薬はコンテナ1基に対しミサイルは1発で、コンテナは発射機に最大4基を搭載できるのでPAC-3弾の場合は発射機1基あたり最大16発を再装填なしで発射できる事となります。

弾薬が細身となったためにロケットモーターも小さくなっており、射程が約20kmと従来型(約70km)の3分の1以下となっています。

従来型では近接信管によって目標の近くでミサイルを爆破しその破片で目標にダメージを与える方法がとられていましたが、弾道ミサイルは大気圏突入に備えて頑丈な造りとなっており、十分なダメージを与えることが出来なかったため、PAC-3弾ではミサイルを直撃させ目標を破壊するHit-to-kill方式が採用されています。

また高高度では空気が薄く動翼のみによる姿勢制御では機動性が落ちるため、前部にサイドスラスターを装備し高高度での機動性を高めています。

誘導方式は中間誘導に慣性航法装置、終末誘導にアクティブレーダーシーカーを使用します。そのためミサイルの先端部はKaバンドのアクティブパルスドップラーレーダーのシーカーを内装したレドームとなっています。

PAC-3といえば弾道ミサイル用というイメージが強いですが、航空機や巡航ミサイルなどの目標にも対処は可能で、その際にはリーサリティ・エンハンサーという装置を使用します。

リーサリティ・エンハンサーはミサイルの直撃寸前に225gのタングステン・ペレット24個を放出し、より破壊能力を向上させるための装置。

現在PAC-3弾の性能向上型としてPAC-3 MSEが開発されており、ロケットモーターと動翼を変更する事で50%の射程の延長と機動性の向上を目指した物。航空自衛隊にも導入される予定です。

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PAC-3弾のコンテナ端部。4発を格納するため4つに分かれているのが見えますね。写真のコンテナは勿論訓練弾で、JXM51という名称の様です。写真のJXM51は2009年4月に三菱重工で製造された物で、重量は1955kg。

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コンテナ側面のINERT表記。INERTとは不活性の意味で、その下にはミサイル・ラウンド・トレーナーの表記がありますね。

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PAC-2訓練弾。PAC-3訓練弾のコンテナとは見た目がかなり異なりますね。こちらは1つのコンテナに対して1発が格納されており、発射機1基あたり最大4発を再装填なしで発射可能。

PAC-2弾はそれ以前に開発されたPAC-1弾から弾道ミサイルの迎撃任務に対応して弾頭の破壊力などを向上したタイプで、湾岸戦争の際にイラク軍が発射したスカッドミサイルの迎撃を行いました。

全長5.3m、弾体直径0.41m、重量914kg、炸薬重量90kgというサイズで、最大射程は前述の通り約70km。最小射程は3kmとなっています。

誘導方式はTVM誘導という方式がとられており、これは発射前にミサイルに飛行コースをプログラムし、発射後にレーダー装置に捉えられると最も効率の良いコースを指示され、目標が近づくと目標のレーダー反射をミサイルのシーカーが受信しデータリンクでレーダー装置に送信、射撃管制装置はレーダー装置から受信した情報を得てミサイルに最適なコースを指示する誘導方法です。

この方法では目標がレーダー装置から離れるにつれて追尾精度が低下するのを、目標に接近していくミサイルからの情報で補うことが出来る利点があります。

ロケットモーターにはTX-486固体推進剤ロケットモーターが使用され、発射後12秒間燃焼し燃焼終了時の速度はマッハ5となります。最大30Gの機動が可能。

PAC-2弾には改良型のPAC-2 GEM弾も存在し、そちらはシーカーと近接信管の感度向上とロケットモーターの出力向上などが行われています。

PAC-2弾は航空機・巡航ミサイルに対する能力はPAC-3に勝る物の、弾道ミサイルに対する能力はPAC-3弾おの方が優れています。

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PAC-2訓練弾の銘板と注意書き。銘板によると型式はJMIMD-104Aというもので、重量は1700kg、製造年月は不明ですがメーカーは三菱重工です。

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各種表記類。

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ミサイルコンテナの架台。PAC-2弾とPAC-3弾は物理的には同時に搭載することが出来ますし写真も混載されていますが、システム上は同じ発射機で同時運用することは出来ません。

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正面から見た架台。

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アンテナマスト。射撃管制装置との通信に使用されます。

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発電機。発射システムを構成するその他の車両は電源車による電力供給を受けますが、発射機は時前の発電機を搭載しています。写真の発電機は神鋼電機製GPA-SE26-1で出力は15Kw、周波数は400Hz。

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発電機の銘板。

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発射機を牽引する7tトラクタ。三菱ふそう・スーパーグレートがベースですね。この他ザ・グレートがベースの7tトラクタも存在します。

陸上自衛隊の保有するトラクタと同じように、最低地上高のアップや装輪駆動化が行われており、トラクタの前面には実弾搭載時に公道を走行する際「○火」の札を掲示する必要があるため札差が設置されています。

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後方から撮影した7tトラクタ。発射機のトレーラーとは切り離されていますね。本らは別の装備品なのですが、今回は同時に掲載する事としました。

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トレーラー部分の銘板とアウトリガーの給油表。トレーラー部分の名称は地対空誘導弾ペトリオット用セミトレーラとなるようですね。製造は東急車輌製造で1998年2月製。

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発射機の銘板と架台部分の吊り上げ・注油表。発射機の銘板は2009年製となっているので、トレーラー部分に新しい発射機を載せたのでしょうかね。


・・・以上、文化系戦闘民族。鉄道員日記がお送りしました。

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