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Channel: 鉄道員日記(ぽっぽやにっき)
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海上自衛隊 DD-115 あきづき型護衛艦一番艦「あきづき」和歌山港

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和歌山港にて

和歌山港で7月16・17日に艦艇広報を行った海上自衛隊のあきづき型護衛艦1番艦「あきづき」。自分は16日と17日の両方に参加し18日の出港の様子も撮影したので掲載します。

あきづき型護衛艦は海上自衛隊が第3世代の汎用護衛艦として建造した最新鋭の汎用護衛艦で、第2世代汎用護衛艦であるむらさめ型・たかなみ型護衛艦を拡大改良する形で開発されました。

主な特徴に対空ミサイルと砲の射撃指揮システムにFCS-3Aを採用した点があり、あきづき型が汎用護衛艦で初めて搭載(本来はたかなみ型から搭載する予定だった)しました。

船体は配置を含めてあめ・なみ型の改良型ですが、従来から行われていたステルス化が大きく進歩しています。あめ・なみ型は7度だった船体の傾斜角は10度に増していますね。

またFCS-3Aにより対空レーダーをマストに搭載する必要がなくなったため従来のラティスマストから寄りステルス性の高い塔型マストに変更されています。

上部構造物が舷側まで拡大され、第1甲板レベルに搭載される装備や舷側通路を覆ってステルス性を高めていますね。このことから外見がイージス護衛艦に似ています。

戦闘指揮システムも新型となり、中核となるOYQ-11戦術情報処理装置はひゅうが型のOYQ-10に速射砲や対艦ミサイルの射撃管制能力を付与したバージョンです。

戦闘指揮システムはOYQ-11サブシステム、FCS-3Aサブシステム、電子戦サブシステム、対潜戦サブシステムで構成されておりNOYQ-1B統合ネットワークで連接されています。

対空戦システムはFCS-3Aを中核とする全く新しいものとなっており、艦対空ミサイルとしては発展型シースパロー(ESSM)を搭載しています。

FCS-3AはFCS-3の能力を向上したタイプで、僚艦防空を行えるようになっています。これはミサイル防衛任務に就いているイージス艦の護衛や、イージス艦が引き抜かれた艦隊の防空担当艦となる事が想定されてのもの。

近接防空火器としては従来通り高性能20mm機関砲が搭載されています。搭載数も従来と同じ2基ですが、格納庫上の高性能20mm機関砲は位置が中心線上に変更されています。

対潜戦システムはソナーに艦首装備のOQQ-22と曳航式のOQR-3を採用し、攻撃手段としては垂直発射式アスロックと68式3連装短魚雷発射管が搭載されています。

2番艦以降は垂直発射式アスロックが国産の07式垂直発射魚雷投射ロケットに更新され、それに伴ったシステム強化により排水量が50トン増加しています。また1番艦も改修で07式に対応する予定。

魚雷防御システムは従来の曳航具4型に加えて投射型静止式ジャマー、自走式デコイが1基ずつ搭載されています。両者はあきづき型で初めて実用化された装備品ですね。

対水上戦システムはOPS-20対水上捜索レーダーで目標捜索を行い、艦対艦ミサイル艦上装置2型でSSM-1Bの発射管制を行います。SSM-1Bは1号型ミサイル艇から使用されている国産の対艦ミサイルですね。

電子戦システムは従来から装備されてきたNOLQ-3電波探知妨害システムの最新型であるNOLQ-3Dが装備され、従来型よりも信号処理能力や感度、方向探知能力が向上しています。デコイ展開システムは従来通りMk36 SRBOCが採用されていますね。

主砲は62口径5インチ単装砲が搭載されており、これはあたご型護衛艦で初めて搭載された単装砲です。たかなみ型の54口径127mm単装速射砲に比べると発射速度は劣るのですが、射程が長いため対地・対水上射撃能力は優れています。

射撃管制は上記の通りFCS-3Aによって行われますが、光学照準器による光学照準射撃も可能となっています。

艦載ヘリはSH-60KもしくはSH-60Jを1機搭載します。船体後部が飛行甲板となっており、ヘリ格納庫は従来よりも拡大されてSH-60J/Kであれば2機、掃海・輸送用のMCH-101も1機格納可能。

機関はCOGAG方式を採用し高速用・巡航用のガスタービンエンジンとしてロールスロイス製スペイSM1Cが2基づつの4基が使用されています。従来のSM1Cの出力向上型で1基あたりの出力は16000馬力。

発電機はシステムの発展により所用電力が従来の1基あたり1500kWから2400kWへと大幅に増強されており、川崎重工製M1A-35が搭載されています。

なお燃費向上策として海上自衛隊艦艇で初めて船尾フラップが装備されました。これは造波抵抗を軽減することで機関の負担を減らし燃費を向上させます。

あきづき型護衛艦は全長150.5m、全幅18.3m、深さ10.9m、喫水5.4mというサイズで、基準排水量は5050トン、満載排水量は6800トンとなっています。最大速力は30ノット以上で乗員は約200名。

写真の1番艦「あきづき」は2009年7月17日に起工し2010年10月13日に進水、2012年3月14日に就役しました。就役後は第1護衛隊群第5護衛隊に配備されています。第5護衛隊は佐世保に配備されている部隊ですね。

今回の艦艇広報は中埠頭第2岸壁で行われ、16日は事前応募による特別見学、17日は応募不要の一般公開として行われました。自分はどちらも参加でき、特に特別見学は海上自衛官の案内で艦橋なども見学できました。

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正面から。

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後方から。

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左サイド。

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艦橋の上部に搭載されたFCS-3Aのアクティブフェイズドアレイレーダー。制式名称は00式射撃指揮装置3型で、対空捜索レーダーと射撃指揮装置が統合されたシステムです。

レーダーはCバンドで動作する対空捜索レーダーとXバンドで動作するESSM用誘導用レーダーの2種類が4面に固定式で搭載されています。大型の物が捜索用で小型の物が誘導用。

あきづき型のFCS-3Aはひゅうが型のFCS-3の改良型であり、レーダー送信部の半導体素子をヒ化ガリウム素子から窒化ガリウム素子に変更して出力を3倍近く高めています。

またOYQ-11に複数目標や横行目標(僚艦に向かう目標)に対処するためのアルゴリズムが追加されたことにより、僚艦防空が可能となりました。

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マスト。番号順に解説します。

ORN-6Eタカン装置。航空機がタカンに対して質問信号を送り、その応答信号から艦の方位と距離を測定して艦の位置を知るための装置です。
リンク16用アンテナ。あきづき型ではリンク11及びその改良型であるリンク16データリンクシステムに対応しており、このアンテナは見通し線内のUHF通信に使用されます。
NOLQ-3D電波探知妨害装置の電波探知用アンテナ。
OPX-11 敵味方識別装置(IFF)アンテナ。従来の汎用護衛艦は回転式の対空レーダーに取り付けられていましたが、あきづき型ではIFFアンテナが独立しています。
NOLQ-3D電波探知妨害装置の方向探知用アンテナ。従来は回転式だった指向性アンテナを固定式に変更し、探知方式を位相差方式に変更することで精度向上を図っています。4面に向けて設置されていますね。
OPS-20C対水上捜索レーダー(メイン)。本来OPS-20は航海用レーダーとして開発されたレーダーでしたが、ひゅうが型で対水上レーダーに発展し、メインとサブの2つで構成されるようになりました。
OPS-20C対水上捜索レーダー(サブ)。近距離を捜査するためのレーダーです。
ORQ-1Cヘリコプター・データリンク用アンテナ。搭載ヘリなどとのデータリンクにより、ヘリのセンサーを艦のセンサーの延長として使用する事も可能です。
NOLQ-3D電波探知妨害装置の電波妨害用アンテナ。ここから飛来する対艦ミサイルなどに電波妨害を行います。対空戦闘では電波妨害が最初に行われますね。
NORA-1衛星通信用アンテナ。スカパーJSAT社が保有するSUPERBIRD衛星を経由して衛星通信を行う為のアンテナで、あきづき型ではマストの付け根と第1煙突の後部に設置されています。
NORQ-1衛星通信用アンテナ。こちらもSUPERBIRDを使用した衛星通信用ですが、NORA-1がXバンドを使用するのに対しこちらはKuバンドを使用します。

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上部構造物。ステルス化のために傾斜が付けられ、なるべく船体と一体化した設計となっていますね。

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後方から撮影した上部構造物。FCS-3Aの後方2面は格納庫の上部に設置されていますね。

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艦橋から見た前甲板。手前から高性能20mm機関砲、Mk41 VLS、62口径5インチ単装砲。

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後部の飛行甲板。周囲の柵やアンテナは起倒式となっており、ヘリの発着時は支障しないように倒して置くことが可能です。

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62口径5インチ速射砲。ユナイテッド・ディフェンス社が開発したMk45 5インチ砲で、砲身が長いのが特徴ですね。砲塔は無人化されており、最大射程は37km、発射速度は毎分16~20発。

現在製造を行っているのBAEシステムズ社ですが、海上自衛隊では日本製鋼所でライセンス生産された物を搭載しています。この砲を搭載している護衛艦はあきづき型とあたご型ですね。

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Mk41 VLS。標準的な垂直発射装置で、あきづき型では前甲板に32セルが装備されています。ESSMとアスロックがここに格納され、ここから発射されます。

ESSMは1セルあたり4発を格納可能で、あきづき型では8セル分、32発が格納されていると思われます。

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高性能20mm機関砲。レイセオンシステムズ社が開発した近接防御火器で、捜索・追尾レーダーとM61ガトリング砲を組み合わせ、近接する目標を自動で攻撃する防空システムです。

あきづき型では最新型のBlock1BではなくBlock1Aが搭載されました。搭載位置は艦橋前方とヘリ格納庫上部。どちらも中央線上に配置されています。

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68式3連装短魚雷発射管。海上自衛隊が従来から使用してきた短魚雷発射管で、近距離に存在する潜水艦に向けて攻撃を行う為の装備です。片舷に3連ずつ装備されていますね。

またステルス化のために通路ごと上部構造物に覆われており、使用時は扉が開き発射管が旋回して艦外へ指向されます。発射は圧縮空気により行われますね。

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SSM-1B艦対艦ミサイルの発射筒。SSM-1Bの制式名称は90式艦対艦誘導弾です。SSM-1Bは陸上自衛隊が保有している地対艦ミサイルのSSM-1を艦載化した艦対艦ミサイル。

発射は固体燃料ロケットにより行われ、その後ターボジェットエンジンにより巡航に入ります。誘導は中間誘導が慣性航法装置、終末誘導がアクティブレーダーとなっています。

従来の艦対艦ミサイルとしてはハープーンが使用されてきました。ハープーンとSSM-1Bを混載することも可能で、この発射筒は最大4連装となります。


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投射型静止式ジャマー発射機。あきづき型が搭載する対魚雷対抗手段の一つで、接近する魚雷を探知するとこの発射機でジャマーを発射して離れた海面に浮遊させ、魚雷を欺瞞するシステムです。

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自走式デコイ発射機。こちらも対魚雷対抗手段で、全長1.6mの自走式デコイ1型を短魚雷発射管と同じく空気圧で発射する発射機です。発射されたデコイは艦と似た音を発しながら艦から遠ざかり、魚雷を艦からそらします。

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飛行甲板に駐機されていたSH-60K 8424号機。長崎県大村航空基地の第22航空隊所属機です。日本で独自に改良したSH-60で、先代のSH-60Jよりも機体規模が大きくなり多様な任務に対応可能となっています。

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11m作業艇。最近の海上自衛隊艦艇の艦載艇といえば11m作業艇ですね。あきづき型では1隻を右舷側にのみ搭載しています。

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7.5m複合型作業艇。第2煙突の左舷側に搭載されています。展開・収容用のクレーンも設置されていますね。従来の内火艇や作業艇よりも高速で機動性が高く、臨検などに使用する事も出来ます。

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艦橋内の様子。艦橋へは16日の特別見学でのみ立ち入れたようです。一般公開だと混み合うのですが、特別見学は10名ほどだったのでゆっくり見られました。

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艦長席。久々に撮影した気がします。

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艦橋操縦盤。艦の方位をコントロールしたり機関操縦室に速力指示を行う操縦盤です。

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海図台。和歌山港周辺の海図がセットされていました。台の下部は海図が収納されているようで、艦にない海図は航海の際に取り寄せるそうです。

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相対風向・真風向と相対風速・真風速を表示するディスプレイ。液晶なのが時代を感じさせますね。針路と速度も表示されていますが、それについては別にアナログの表示器が設置されています。

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両舷スクリュープロペラのピッチ角と軸回転数、舵の角度を表示する計器。下部に「油の一滴、血の一滴」と書いたシールが貼られていますね。潜水艦だと油が水に変わるようです。

奥の黒い計器は艦の速力を表示する物で、更に奥の計器は艦の方位を表示しています。

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ヘリ格納庫。床面には機体移送用のレールが設置されており、2機格納することを想定して2条引かれていますね。

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ヘリ格納庫には整備用具など様々な道具が置かれていましたが、こちらは機体を甲板に係止するためのタイダウンチェーン。

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ヘリ格納庫の入り口に取り付けられた着艦誘導灯。無線封止時に光で着艦誘導を行うための物です。

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境界灯。飛行甲板を囲むように設置されている黄色い灯器です。

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第1煙突後部に設置されたNORA-1/NORQ-1衛星通信用アンテナ。NORA-1はXバンドを、NORQ-1はKuバンドを使用します。Xバンドは天候に左右されにくく、Kuバンドは大容量の通信を行えるという利点があります。

この他インマルサットの衛星を経由した通信のためにNORC-4B衛星通信用アンテナも搭載されています。

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ヘリ格納庫の上部に取り付けられたFCS-3AとAN/USC-42衛星通信用アンテナ。AN/USC-42はこれは米海軍が構成しているUHF-SATCOMに接続する為のアンテナです。

マストのリンク16アンテナが見通し線内の通信を担うのに対し、こちらは見通し線外を衛星経由で通信するためのアンテナ。従来はヘリコプター搭載護衛艦やミサイル護衛艦に搭載されてきましたが、汎用護衛艦では初めて搭載されました。

なお2番艦以降は架台のみの準備工事状態となっており、現在の所実際にAN/USC-42が搭載されているのは1番艦のみとなっています。

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艦首の主錨。アドミラルティー型。左舷側にもあります。

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水上艦用機関銃架3型。12.7mm重機関銃M2を据え付けて射撃するための防楯付き銃架で、艦橋構造物の前方に片舷1基ずつ設置されています。

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舷梯周辺。舷梯は非使用時はこのように上部構造物と一体化して格納されるようになっており、ステルス製を高めています。その隣の扉は短魚雷発射管用、奥の扉は自走式デコイ発射機用です。

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タラップ。呉港務隊の保有であきづきの幕が張られていました。我々はここを通って乗下艦しました。結構急で艦側の段差が大きかったですね。

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あきづきの艦歴と三菱重工長崎造船所のプレート。

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あきづき艦名板。

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あきづきの自衛艦旗。

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艦艇広報を行う「あきづき」。一般公開の際の写真で、一時はご覧のように長蛇の行列ができていました。やはりここ数年でかなり見学者が増えているように思います。

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青岸橋から撮影した「あきづき」。

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18日朝、8時前に岸壁を離岸した「あきづき」。

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タグボートによって回頭されました。

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ドが付く逆光の中、和歌山港を出港してきた「あきづき」。入港は見逃しましたが、出港はなんとか押さえることが出来てホッとした気分でしたね。

因みに、出港の際に小さなボートが接近したため「あきづき」が汽笛による警告信号(短5声)を発するというシーンがありました。

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その後、南に変針し紀伊水道を南下していきました。


・・・以上、はーつかれた。鉄道員日記がお送りしました。

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