神戸港にて
神戸港の遊覧船の上から撮影した東海汽船の「セブンアイランド夢」。既に退役している旅客船で、製造元である川崎重工神戸工場の敷地内に置かれているのが見えたので撮影しました。
「セブンアイランド夢」は少し珍しい水中翼船ですが、下部が塀に隠れて見えなくなっているのであまり特殊な船には見えませんね。船首部分にある溝がわかるぐらい。
この水中翼船はボーイング929という形式で、航空機製造で有名なボーイングが開発しました。水中翼船はいくつかのタイプが存在しますが、ボーイング929は全没翼型ですね。
船体の下面に水中翼が取り付けられており、低速時は船体の浮力で航行し、高速時は水中翼に揚力が発生して船体が浮上、水中翼だけで航行するという仕組みです。
通常の船舶に比べて抵抗が少なく高速で航行できるという利点があり、最高速度は45ktに達します。推進力は船体後部のウォータージェットで得ており、主機関は2767kWのガスタービンエンジン2基。
元々は1960年代から軍用の水中翼船として開発されており、1966年に実用化されました。NATOの計画により1974年にイタリア海軍でスパルヴィエロ級ミサイル艇が、1977年に米海軍でペガサス級ミサイル艇が就役しています。海上自衛隊でも1号型ミサイル艇として水中翼船を運用していました。
旅客型の開発は1974年に完了し、同時に「ジェットフォイル」の愛称が付けられています。生産ライセンスは川崎重工にも提供され、1989年に最初の日本製ジェットフォイルが就役しました。
なおイタリアのフィンカンティエーリ社と住友重機械工業にもライセンスが提供され、それぞれスパルヴィエロ級ミサイル艇と1号型ミサイル艇を建造しています。
川崎重工では1989年から1995年までに15隻のジェットフォイルが建造され、ボーイングと合わせて29隻のジェットフォイルが建造されています。日本で最初にジェットフォイルを定期航路に投入したのは佐渡汽船で、川崎重工での製造が始める前の1977年に運航を開始しました。
東海汽船では2002年からジェットフォイルの運航を開始しています。現在は4隻が東京~大島~神津島航路、熱海~大島航路、熱海~神津島航路、下田~大島~館山航路、熱海~伊東~稲取~大島航路で運航されていますね。
写真のセブンアイランド夢はボーイングで建造された20番船で、1981年6月にベルギーの船会社に引き渡されました。その後はドイツ、バハマと渡り歩き、東海汽船にやって来ています。
2014年に老朽化を理由として退役しました。東海汽船は代船に新造されたジェットフォイルを希望していましたが実現せず、JR九州高速船が博多~対馬~釜山航路で運航していた「ビートル5世」を中古で購入し、「セブンアイランド大漁」として導入しています。
しかし東海汽船はジェットフォイルの新造を諦めておらず、次に退役する「セブンアイランド虹」の代船には新造されたジェットフォイルを充てることとなっています。
・・・以上、これも乗ってみたい船である。ef_end_63がお送りしました。