舞鶴港・若狭湾にて
7月25~27日に撮影した海上自衛隊のDDG-175 こんごう型護衛艦3番艦「みょうこう」。25日は舞鶴港にて、26日は舞鶴地方隊展示訓練にて、27日はサマーフェスタにて撮影しました。
こんごう型護衛艦は海上自衛隊が初めて導入したイージスシステム搭載艦で、米海軍以外が初めで装備したイージスシステム搭載艦でもあります。
1980年代後半に防衛庁では洋上防空体制の強化が模索され始め、その結果護衛艦の艦対空ミサイルシステムの性能向上にはイージスシステムが最も適しているという結論に至りました。
1987年の安全保障会議での了承を経て1988年の中期防衛力整備計画でイージス艦の導入が正式決定します。
アメリカ側もソ連の攻撃機や対艦ミサイルによる飽和攻撃から空母などを護衛するため、海上自衛隊にもイージス艦を保有させて支援を行わせることを構想していました。
イージスシステムはアメリカから対外有償軍事援助により輸入され、船体は米海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦を基にして設計が行われています。
そのためアーレイ・バーク級と共通する点も多いのですが、こんごう型は艦隊の防空中枢であるため船体が一回り大きく、艦橋構造物は群司令機能を持たせたために1層高くなっています。
武器システムはイージスシステムを搭載しており、イージスシステムはAN/SPY-1レーダーを中心に指揮決定システム、武器管制システム、射撃管制システム、対空ミサイル及び発射機、ディスプレイシステム、自己診断システム、即応性保持システムで構成されています。
AN/SPY-1レーダーは多数目標の同時捜索探知、追尾、評定、発射されたミサイルの追尾・指令誘導を担う多機能レーダーです。
それまで複数目標の同時対処はイルミネーターの数に依存し2目標程度だったのに対し、イージスシステムではイルミネーターを使用するのは終末誘導のみとなったので、同時に10目標以上に対処でき性能が飛躍的に向上しています。
指揮決定システムはレーダー・ソナー・データリンクなどからの情報を基に、周囲の目標に対して脅威度や攻撃手段などを自動的に判断します。これにより従来のシステムよりも大幅に応答時間を短縮しています。
武器管制システムは指揮決定システムが攻撃の判断を出した時にミサイル発射機に指令を送り、発射後は中間誘導を行います。対空・対艦ミサイル、近接防空火器(CIWS)、砲も連接されています。
射撃指揮システムは艦対空ミサイルによる攻撃を直接担っており、ミサイルの終末誘導の為の目標捕捉などを行います。
イージスシステムの動作モードには3種類有り、目標捜索→脅威度判定→攻撃指令→攻撃までの流れを全て手動で行う手動モード、攻撃指令のみ人が行う半自動モード、事前に入力された距離パラメータに基づいて指揮決定システムが攻撃指令を出す自動モードの3つです。
こんごう型が搭載しているイージスシステムのバージョンは、ベースライン4を基に日本独自の改良を加えたベースラインJ1です。
対潜戦闘システムや電子戦システムは機密性が高く輸出されなかったため、日本が独自に開発した物を搭載しています。これらのシステムはアメリカの開発した物と同等の性能を持っているようです。
武装はMk41垂直発射装置にSM-2・SM-3スタンダード対空ミサイル及び垂直発射型アスロック、対艦ミサイルとしてRGM-84ハープーン、54口径127mm単装速射砲、高性能20mm機関砲、68式3連装短魚雷発射管HOS-302が搭載されています。
機関はゼネラル・エレクトリック製LM2500ガスタービンエンジンを石川島播磨重工業がライセンス生産した物を採用しており、高速用2基と巡航用2基を使用するCOGAG方式が採用されています。
船体はある程度ステルス性が考慮された設計となっていますが、こんごう型の設計時はステルス性の研究が進んでいなかった事もあり煙突などには直線デザインが採用されていません。
またマストもステルス性の高い塔型ではなく従来と同じのラティス型となっていますね。ステルス性は次級のあたご型護衛艦で改良されています。
こんごう型護衛艦の基準排水量は7250t、満載排水量は9485t、全長161mで全幅21m、喫水6.2m、深さ12m、最大速力30ノット以上、乗員約300名というスペックです。同型艦は4隻で各護衛隊群に1隻ずつ配備されています。
真横から撮影した「みょうこう」。
後甲板。後甲板は飛行甲板となっており、ヘリの発着艦が可能です。格納庫は設けられていないため常時搭載は不可能。
艦尾から撮影した「みょうこう」。
「みょうこう」の上部構造物。特徴的な形状でとても印象深いですね。
艦の前半部。艦首に装備されているのが54口径127mm単装速射砲で、見えませんがその後方にMk41 VLS、艦橋構造物の正面に設置されているのが高性能20mm機関砲。
艦橋の下、左右に取り付けられている八角形の板がAN/SPY-1D多機能レーダー。艦橋ウイングの左右にある白いレドームはスーパーバード衛星通信用アンテナ。高性能20mm機関砲の上にある丸いレドームも衛星通信用アンテナで、米海軍との通信に使用されます。
「みょうこう」のマスト。様々なアンテナ類が並んでいますね。上が切れていますが、切れている部分にはNORQ-2 電波探知妨害装置の探知アンテナがあります。
AN/SPY-1D多機能レーダー。AN/SPY-1はアメリカのロッキード・マーティンが製造しているパッシブフェイズドアレイレーダーで、動作周波数はSバンド。このレーダーを4面に装備する事で全周半球空間の捜索が可能です。
非常に優れた探知能力を有しており、こんごう型護衛艦が装備しているAN/SPY-1Dは駆逐艦向けに軽量化されたタイプ。
煙突付近。煙突周辺はAN/SPY-1Dの視界を確保するためスリムに設計されており、角には丸みがありますね。第1煙突と第2煙突の間にはハープーン発射筒が、第2煙突の後部にはAN/SPG-62と高性能20mm機関砲が搭載されています。
舷側通路。こんごう型の艦橋構造物は両舷いっぱいまで伸ばされているため、舷側通路も艦橋構造物の中を通っています。それぞれの出入り口には大きな扉が設置されています。
後甲板にて。上記の通り後甲板は飛行甲板として使用されており、ヘリ着艦用のマーキングがあります。こうして見ると煙突周辺のスリムさが解りますね。
艦首の54口径127mm単装速射砲。イタリアのオート・メラーラが製造した艦載砲システムで、毎分45発の発射速度と軽量化を両立しており、非常に優れた性能を有しています。
即応弾は66発で3つのマガジンドラムに22発ずつが装填されています。それぞれのドラムに違う弾種の砲弾を装填する事が可能。海上自衛隊ではこんごう型とたかなみ型護衛艦が装備していますね。
この127mm速射砲はイージスシステムの射撃指揮システムでは制御されておらず、日本が開発したFCS-2を搭載して射撃管制をおこなっています。次級のあたご型ではイージスシステムとの接合性を考慮しMk45 5インチ砲が搭載されました。
Mk41 VLS。弾薬庫と発射機を兼ねた垂直発射装置であり、SM-2、SM-3対空ミサイル、垂直発射型アスロックがこの中に格納されています。発射時は蓋が開いてそのまま発射されます。
こんごう型ではMk41 mod6が搭載され、前部29セル、後部61セルの90セルが搭載されています。写真は前部VLS。
近接防空火器として搭載されている高性能20mm機関砲。艦に近づく目標を自動的に攻撃する近接防空火器で、対艦ミサイルからの防御を主目的としています。
上部の白い部分に捜索・追尾用レーダーがあり、下部の機関砲で攻撃を行います。こんごう型ではBlock1Bを搭載しており、Block1Bでは新型レーダーの採用や赤外線センサーによる光学照準が可能になる等の改良が行われています。
RGM-84ハープーン対艦ミサイル発射筒。最大4連装とすることが可能ですが、海上自衛隊の艦艇では2連装か3連装にしている姿をよく見ますね。
後部VLS。
艦尾の対魚雷デコイ繰り出し口。ここから自艦に向けて発射された魚雷への対抗手段として曳航式の囮を繰り出します。
搭載艇は改7.9m作業艇を両舷に搭載。
舷梯。
25日の舞鶴地方隊展示訓練を終えて舞鶴港に戻ってきた「みょうこう」。
登舷礼を行う「みょうこう」の乗員。
曳船を従えて舞鶴港へ入港する「みょうこう」。
翌日の舞鶴地方隊展示訓練にて、護衛艦「しらね」から撮影した「みょうこう」。
「みょうこう」の乗艦者たち。かなり多くの人が乗艦していたようでした。
27日のサマーフェスタで撮影した「みょうこう」。イージス艦に乗艦して見学したのはこの時が初めてでした。
岸壁目線。近くで見ると本当に本当に大きいと実感します。
東舞鶴駅行きのシャトルバスから撮影した「みょうこう」。
艦番号「175」。
艦尾の艦名表記。
「みょうこう」のプレート。
こんごう型護衛艦3番艦「みょうこう」は1993年4月8日に起工し1994年10月5日に進水、1996年3月14日に就役しました。現在は第3護衛隊群第7護衛隊に所属しています。
1998年8月31日には北朝鮮が発射した弾道ミサイル「テポドン1号」の探知に成功、1999年3月22日から24日にかけて発生した能登半島沖不審船事件では追跡を行い、初となる海上警備行動も発令され警告射撃を行っています。
2009年10月27日にはミサイル防衛機能を付加する改修を完了し、SM-3ブロック1Aの発射試験を行い、模擬弾道ミサイルの探知・追尾・迎撃に成功しています。
今回の舞鶴地方隊展示訓練では観閲艦を務め、舞鶴地方総監の井上海将が乗艦していたため海将旗を掲げていました。
・・・以上、行きはジェットスターで帰りはピーチ。ぽっぽやがお送りしました。