和歌山港にて
和歌山港で6月19・20日に撮影した海洋開発研究機構(JAMSTEC)の海洋調査船「かいよう」。JAMSTECの船はこれが初撮影です。
「かいよう」は大陸棚の海洋資源開発推進のために必要な各種の研究開発と調査・実験を行うための高性能専用実験船として建造された船で、当初は海中作業実験船という船種でした。
そのため水深300メートルに於ける潜水作業技術を確立させるべく、飽和潜水によるSDC(水中エレベータ)-DDC(船上減圧室)システムを装備していました。
このシステムはDDCに潜水員12名、SDCに3名を収容可能で、DDCは主室・副室と潜水準備室で構成され、SDCは円筒形・球形のエレベータが各1基搭載されていました。
1985年に着手された「ニューシートピア」計画でSDC-DDCシステムは重要な役割を果たし、1990年に同計画が水深300mでの最終実験を終えた後は海洋調査船として運用されています。
2000年にSDC-DDCシステムを撤去してエアガンの投入・揚収装置を搭載するなど改装が行われました。現在は海底地形調査や海底下の構造探査、無人探査機「ハイパードルフィン」「ディープ・トウ」の運用支援等を行う海洋調査船となっています。
船体は半水没型双胴船型を採用しています。この船型は水面下に魚雷型の没水船体と、水面上の船体を細い足で繋いだ構造となっており、揺れが格段に小さく広い甲板面積を確保できるというメリットがあります。
推進機関は水中音響機器への影響を避けるため、静粛性に優れたディーゼル・エレクトリック方式となっており、4基のディーゼル発電機と電動機、2基2軸の可変ピッチプロペラ、8基のサイドスラスターで構成されています。
なお発電機の電力は船内の電源にも使用されており、統合電気推進船と言うことになりますね。ディーゼルエンジンは1850馬力のV型16気筒4サイクルエンジンであり、電動機は定格出力1250kW。
最大速力は13.25ノットで、航続距離は約5100海里。就役は1985年5月で、就役時の総トン数は2849トン、改装後は3385トンに増加しています。
「かいよう」ではSDCの揚降時には精密な操船が必要とされたことから、国産では初めて自動船位保持装置が搭載されています。風浪や潮流によって船が移動しても、GPSや音響トランスポンダからの情報でプロペラ・サイドスラスターを作動させ自動的に定点保持を行うことが可能です。
船体全長は61.55m、全幅は28m、深さは10.6m、喫水6.3m、搭載人員60名(乗組員29名・研究員など31名)、母港は横須賀港で、日本海洋事業が運行・管理業務を行っています。
この日は和歌山港周辺のAISを眺めていると見慣れない船がおり、調べてみるとJAMSTECの船だと言うことで撮影に出ました。18日の夜と19日の朝に撮影しています。
この時和歌山港の沖合には「しんかい6500」の母船である「よこすか」も停泊しており、その他海洋調査系の船がいくつか紀伊水道を航行していたので、何らかの海洋調査を行っていた物と思われます。
なお、この「かいよう」は海洋調査のみならず、日航123便の垂直尾翼捜索・「滋賀丸」の探索・護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」衝突事故海域調査なども行っています。
後方から撮影。
後部に搭載されている青い台のようなものがエアガンの投入・揚収装置で、このエアガンは海洋地震計屈折法システムを構成するために搭載されています。
海洋地震計屈折法システムはエアガンで人工地震波を発生させ、プレート内部の各地層で屈折・反射した地震波を海底地震計で捉えて地下構造を解析するシステムです。
海底下数十kmまで詳細に地殻構造を把握することが可能。「かいよう」は100台以上の海底地震計を搭載可能で、大規模な屈折法調査が可能となっています。
また、エアガンから弾性波を発して海底下地層からの反射波をストリーマケーブルで受信し、海底下十数kmまでの地殻構造を詳細に把握するマルチチャンネル反射法探査システムも搭載しています。
「エアガン」と呼ばれるのは圧縮空気を一定間隔で海中に放出して音源としているため。発信する音の周波数に応じたサイズの物が使用されます。
18日の夜に撮影した「かいよう」
・・・以上、こういう船は面白いなぁ。ef_end_63がお送りしました。